『72時間ホンネテレビ』リスクもハンデも乗り越えた末の大成功

「世界に一つだけの花」から「72」へ
松谷 創一郎 プロフィール

「もうアイドルじゃないんじゃないかな」(草なぎ)

2日目は、朝からきゃりーぱみゅぱみゅや三谷幸喜、山崎賢人、山田孝之、市川海老蔵などが登場し、TwitterやYouTube、Instagram、ブログを使いこなすためのレクチャーが行われた。インターネットに疎い3人は、番組と同時進行でそれぞれツールを使って発信していった。

ただこの日のハイライトは、夜にやってきた。六本木の焼肉屋における堺正章との食事だ。3人はそれまでと異なり、緊張した面持ちで堺と対峙した。72分もの間、堺は3人にいくつもの鋭い質問し続けた。

まず重要だったのは、この焼肉屋が昨年大晦日に木村拓哉を除くSMAPメンバー4人と、森且行が集合した場だったことだ。堺はそのことについても言及し、3人とさまざまなことについて話し合った。このときの3人は、それまでの間でもっとも緊張しながらも、非常に真剣に堺に対峙していたように見えた。

そのなかでもっとも興味深かったのは、「アイドル」という存在について言及した場面だ。3人はそれぞれ自身のアイドル観を述べたが、草なぎだけこの番組によって生じた気持ちの変化について言及した。

「もしかして、新しい地図になって72時間テレビをやってる僕らは、もうアイドルじゃないんじゃないかな、と思う気持ちもあるんです。こういうふうにネットを始めて、SNSで繋がって(略)もう違う扉が確実に開いてて、そこから出ているという気持ちが強いので。だから面と向かってアイドルかと問われると、いまの僕は違うのかなってちょっと思うんです」

木村拓哉はこの番組に賛同しただろうか

アイドルやスターと呼ばれる存在は、20世紀以降、基本的には大衆(マス)の理想像として存在してきた。同時にそうしたスター像は、20世紀に普及した紙媒体(新聞・雑誌)、ラジオ、映画、テレビと、マスメディアの趨勢とともに変化してきた。

歴史的に、芸能文化とメディアは切っても切れない関係だ。

そうした歴史的経緯を踏まえると、草なぎが戸惑いを抱くのもわかる。テレビを中心とした時代からインターネットへの変化は、アイドルやスターのみならず芸能文化を再編成する可能性がある。視聴者の多くも、今回の番組がその大きなメルクマールであることをかなり感じ取ったはずだ。

だが、そんな時代においてこれまでのような「アイドル」が、どれほど存立しうるのかという問いは、たしかに生ずるだろう。

 

丸3日続いた生放送では、従来はカットされていたはずの3人が写されてしまったこともたしかだ。それはファンがこれまで抱いてきた「理想像」を損なうリスクをはらんでいる。

このときひとつの思考実験として挙げたいのは、もし木村拓哉が3人とともにジャニーズを飛びしていたときにこの番組に出演したか、ということだ。SMAPのなかでもっともスター性が強く人気が高かった木村は、この番組に賛同しただろうか。

また、そもそもSMAPは、木村の存在によってアイドル性・スター性を強く維持していたとも言える。他の4人が親しみのある振る舞いができたのも、木村の存在性と中和されていたからだ。

SNSを使いこなしてファンとの距離を縮めることが、アイドルやスターと呼ばれる存在にとって正解かどうかはわからない。それが新たなアイドル・スター像に結びつくか、それとも単なるネット有名人で終わるかは未知数だ。もちろんネットはツールでしかないので、使い方しだいだが。

なんにせよ、草なぎはそうしたネットと芸能の関係について、番組途中にすでにさまざまなことを感じ取っていたのだろう。