クロマグロの「完全養殖」に成功した飼料メーカーの奮闘録

実現に30年かかった
週刊現代 プロフィール

これを次々採用するうちに「幹部がここまでやっているんだから派閥などつくっている場合じゃない!」と言ってくれる社員も多くなりました。

すると研究所で両社の研究成果が一つになって、画期的な新製品が生まれ始めたのです! しみじみ「素晴らしい社員に囲まれ、私はなんて恵まれた社長なのだろう」と思います。そして「組織はやはり、人の心で動くのだ」と痛感しました。

【逆説】

趣味は、月並みですが読書です。特に好きなのが「逆説の日本史」。私は三井物産時代、穀物の売買で「常識的に絶対こうなるだろう」と言われていることを信じ込んで相場を読み違え、会社に損害を与えたことがあります。

この経験から「物事の流れを見たら、必ずその反対からも見る」「世の中や市場は一方的に同じ方向に流れることはなく、皆が同じことを言う時は、いずれ反対の動きになる」と強く意識するようになりました。そんな私にとって、これは名著です。

 

【最先端】

当社は国内で初めて「乳牛の搾乳ロボットに適した専用配合飼料」の特許を取り販売を始めました。牛の乳を搾るのは大変な重労働で、現状は人手不足。そこで、牛が飼料を食べるために搾乳ロボット内部へ入ると、機械が自動で乳の先端を洗浄、搾乳する技術が開発されました。

さらに効率的な運用を行うためには、牛のロボットへの進入回数を増やす必要があります。そこで当社はりんごジュース粕等を使い、牛が食べたくて仕方がなくなる飼料をつくりあげたのです。

これにより、人手不足解消どころかコストダウンまで可能になりました。幹部が世の流れをつかみ、社員たちが応えて結果を出してくれる。私は本当に幸せな社長だと思います。

(取材・文/夏目人生法則)

やまうち・たかし/'55年大阪府生まれ。台湾大学卒業後、'80年に三井物産へ入社。'12年日本配合飼料代表取締役社長に就任。'14年の協同飼料との合併後、フィード・ワンの代表取締役社長に就任し、以来現職。'16年の前期決算では、利益、時価総額とも統合時の2倍強になるなど、合併を大成功へと導いた

『週刊現代』2017年11月11日号より