36歳を境に、大きな「世代の断絶」があることに気づいていますか

道理で話が合わないと思ったら…
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--上の世代から下の世代を理解しようと動くことは有効なわけですね。しかし、そもそも同調や共感できる話題探しが難しいいま、歩み寄ること自体が昔に比べて難しくなっているように感じます。逆にやってはいけないことは何かありますか?

尾原:「ダブルバインド」には気をつけた方がいいでしょう。例えば、怒らないから言ってみろと言われて正直に言ったのに、余計怒られたという経験はありませんか。ダブルバインドが起こる背景としては、上の人がただ感情をぶつけたいがためにそういった行動を取ってしまうことが多い。

 

部下を人として考えるのではなく、モノとして怒りやストレスの吐け口に使っているだけとも言えます。昔はトップダウンで上が言うことをただ下がこなす、という図式でもよかったかもしれない。しかし、時代は確実に変化してきている。

「上司が部下を人として見ているかが組織としては大事だ」と、以前Googleでも言っていましたね。自分もやってしまっていないか振り返ってみることをおすすめします。

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意味のないことに熱くなれる強み

--今後、「乾けない世代」が社会の中心になっていくわけですが、そのなかで「乾いている世代」に知ってほしいこと、身につけて欲しい要素はなんでしょうか?

尾原:双方の世代にいえることではありますが、好きなことを明確にして磨き、強みにしていくことは大事です。狩猟採集時代や農耕時代などは筋肉があることがエリートの証だった。産業革命を経て、次に頭脳や知識が資本に変わった。

そして今や、AIの登場で頭脳や知識すら価値を持たない時代が予見されるようになりました。

人間の仕事の50%が20年でAIに奪われるとオックスフォード大学が発表していますが、そんな変化の時代には、AIでは置き替われないような個性を発揮していなければなりません。つまり「好き・嫌い」とか「嗜好性」という人間らしい部分が求められてくるのです。

あとは、社会が多様化するなかで、たとえば左利き専用の商品のような、少量しか存在しないものがまだまだ生まれくると考えています。問題解決の民主化が起こるというか、我慢していたマイノリティの人たちのための動きが活発になるわけです。

3Dプリンターなどの最新技術の発展によって、小ロットでも便利な商品が作れるようになり、地方の人もネットで欲しいものを買えるようになりました。

これまでは小さくて無視されていた問題が、今後どんどん解決できるようになっていきます。そのうえで大事なのは、マイノリティの人の気持ちや課題をしっかり理解しているかです。テクノロジーなどは他人が提供してくれても、課題がはっきりしないと何をどう動かせばいいか決められませんし、その人のために努力を続けられる熱意がないとそもそも動き出せませんから。

--「嗜好性」と「マイノリティ」が注目されるようになるわけですね。

尾原:マイノリティに注目できる世の中になっていくと、日本は偏愛産業大国として台頭してくると私は思っています。カラオケやアイドル、漫画などは生きていくだけだったらなくてもいいものですよね。しかし、なくてもいいものをこれだけ盛り上げてお金に変えられる国は日本以外にはありません。意味のないところに意味を作って盛り上がれる国が日本なんです。

テレビを見なくなった若者たちが、「バルス」とツイートしたいがために、『天空の城ラピュタ』をわざわざリアルタイムで見るような国。これだけ偏愛気質のある日本だからこそ、AI時代がきたとしても新たな課題を見つけて再び”乾ける”と私は期待しています。

尾原和啓(おばら・かずひろ) IT批評家、藤原投資顧問シニアアドバイザー。京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を専門とし、経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。現在13職目 、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。シンクルはApple 2016年ベストアプリ10選に、著書 「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)はKindle、有名書店一位のベストセラーとなった

(取材・執筆:田中利知+YOSCA 企画編集:FIREBUG)