iPS細胞、ゲノム編集…「不死社会」は人間を幸せにするか

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週刊現代 プロフィール

自分の寿命は自分で決める

近未来SFの世界だと思っていたことが当たり前になる――本連載で取り上げた「AI」「自動運転」がそうだったが、iPS細胞やゲノム編集といった技術も、当然のように医療に導入され、病気を治すのに役立てられるようになるのだ。

しかもそれは細胞や遺伝子のかたちをそっくり変えたり殖やしたりするのだから、これまでに開発されてきた手術や薬とはまったく異なる手法だ。誰もが120歳、150歳と齢を重ねることもできるかもしれない。

 

そうすると「病を克服する」という、ある意味で対症療法的だった医療の概念は変わる。恒常的に細胞を入れ替えながら「いつ寿命を終えるか」を本人が家族と考え、選ぶ社会が到来するのだ。

出生したらすぐにゲノム解析を済ませておき、自分の身体のどこが弱いのか、これからどのような病気にかかりやすいかを知っておく。

遺伝的に特定の病気リスクが高い場合、若いうちに細胞バンクで自分の細胞を保管し、将来的に不調が起これば、その細胞を培養して置き換える。もしくは、発症する前にゲノム編集を行い、病気になるかもしれない遺伝子を修正しておく。このようなことも実現可能だ。

問題は、果たしてこのような治療を誰もが平等に受けられるのか、ということである。

現在でも歯のインプラントやがんの自由診療などは保険適用外で、高額な治療費がかさむ。iPS細胞やゲノム編集は言ってみれば「超先進医療」で、従来の治療よりもはるかに高いおカネがかかることは間違いない。

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つまり、金銭的な余裕の有無が我々の寿命を大きく左右することになるかもしれない。有り体にいえば、長期的に細胞を入れ替え、高度なゲノム編集を受け続けられる大金持ちだけが長く生きることができる。

一方そうでない人間はこれまで通り、投薬や手術に一縷の望みを託し、病と戦っていくことになる。

仮に治療を受けられたとしても「健康寿命」がどこまで延びるかは未知数だ。100歳でも現役さながらに働いて稼げるのか、貯金を崩しながらただ延命治療を受け続ける毎日を過ごすことになるのか。

前者か後者かで、幸せな「不死社会」を送れるかどうかは大きく変わる。

「不死」を目指すこと、親から授かった遺伝子を操作することに対しては倫理的な懸念が払拭できない。

ナチス・ドイツにおける優生思想やクローン羊「ドリー」といった過去の例を挙げるまでもなく、遺伝子を作り変えることで「強い人間」を生み出すことは人間の尊厳を蹂躙する可能性があると危険視されてきた。