安倍総理、あなたの読みは正しい…だからこそ警告したいことがある

どうかこの公開書面を見てほしい
山下 祐介 プロフィール

政策論争としての勝利か? 増税から見えるもの

今回の選挙を政策論争としてみたとき、希望の党や立憲民主党の掲げる政策の未熟さや不整合を批判するメディアがかなりありました。

でもこれも考えれば、過酷な選挙戦スタートを野党に強いたわけですから、政策論争が自民党に優位に働いたのは当然です。そしてこれも読み通りなのでしょうか。

なにより北朝鮮問題の使い方が選挙戦略としてすばらしかった。

偶然といってよいのか、その直前まで防衛省で問題を噴出させていた前大臣から、安定感のある小野寺大臣に交替していたことが、「外交は自民党でなくては」という意識をうみ、票に大きく反映したようです。

でも人々がそう思うのは当たり前です。北朝鮮の状況を前に、野党の勢力が整わないまま、そこに政権を委ねるべきだという馬鹿な国民はそういません。ですからこれもきわめて卑怯なやり方です。

他方でもちろん、そこには自民党への信頼感はあったと思います。でも勘違いしてはいけません。繰り返しますが、それはあなたへの信頼ではありません。自民党というこの国を代表する政党への信頼です。

しっかりとした政治家が自民党に集まるのも、「自民党」という立派な器があるからで、あなたに集まっているのではありません。この「自民党への信頼」を「安倍晋三への信頼」と読み誤ってはいけません。

ところで、あまり世間では問題視されていませんが、あなたが選挙で掲げた公約は、自民党内でしっかりと詰めて出て来たものではないようですね。それどころか党内発のものではないものが混じっていますね。

今回の選挙では、あなたは他党からの「政策泥棒」すらやりました。これはなかなか理解に苦しみます。それぐらい切羽詰まっていたということでしょうか。

 

今回の政策の目玉の一つは消費増税でした。それも国の借金返済に充てるのではなく、国民の社会保障にあてるというものでした。

これに対し、野党が次々と増税反対を掲げましたので何だか問題の核心がぼけてしまいましたが、本来、これは民進党が国民に提案する次の主要政策の中心にあったものです。

慶応大学の井出英策氏が提起した、目から鱗の秀逸な論理を下敷きに、民進党(とくに前原氏の周辺)が練っていたもののようです。関わっていた佐藤優さんも、あなたのこのやり方に疑義を唱えていると聞きました。

そして、野党第一党の政策が、与党の考えと一致するのなら国会で議論すればよく、本来は選挙をする必要などない論点です。

結局、野党は野党で増税反対を叫びましたから、あなたの読み通りこの政策を独占できました。

でも選挙が終わってみれば、民進党が練っていたこの増税=社会保障による財政・経済の好循環化という思い切った論理の転換はあなたの政策の中には残っておらず、その精神は骨抜きになってしまったようです。

それどころかやっぱり「経済優先」の「生産性革命」なんですよね。それでは何のために増税と社会保障を連動させるのか分かりません。経済優先なら、なぜ増税するのですか。あなたはこの政策提案の本当の意味が分かっていない。

あなたは、この国を立て直す、非常に重要な研究者発の重要な政策論点の提起を、ただ今回の選挙を正当化したいばかりに台無しにしてしまいました。

あなたが汚したことによって、この重要なアイディアを国民に分かってもらうためには、今後相当な努力が必要になってくるかと思います。この責任を感じてください。

政治は遊びではありません。そもそも増税は選挙で選ぶべきものではありません。本当に増税をするのなら、慎重に正しい判断で行われねばなりません。国民が嫌だといっても、しっかりとその必要を示し、理解をえなければなりません。

民進党が構築していた論理をあなたもしっかりと学び、国民にも伝えなくてはならなかったのです。そもそも増税を問うことは、あなたにとってどうでもよいことではなかったのかと、そういうふうにさえ思えてしまうのです。