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宇野昌磨の哲学「フィギュアはジャンプだけのスポーツじゃない」

驚きの言葉を連発するニューヒーロー

人類史上初の4回転

2020年東京五輪の陰に隠れがちだが、次のオリンピックは2018年2月。

ピョンチャン冬季五輪は、もうそこまで迫っている。

冬の五輪と言えば注目はフィギュアスケート。だが今年は花形の女子ではなく、男子シングルがとんでもないことになっているのだ。

フィギュアスケートのジャンプは、男子においても長く3回転がスタンダードだった。4回転ジャンプなど、跳べれば超一流。世界のトップ選手にとっても、一か八かに近い大技として立ちはだかってきた。

オリンピックでも、2010年バンクーバー五輪では4回転に挑戦しない安全策をとった選手が優勝し、2014年を制した羽生結弦も、フリーで2度挑んで1本成功したのみ。8度のジャンプを跳ぶフリーで、4回転は1本か2本跳べれば、十分世界チャンピオンになれる――ほんの数年前までは、それほどの必殺技だったのだ。

その4回転ジャンプが、ソチ五輪以降、フィギュアスケート史上空前の大発展を遂げている。

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ひとくちにジャンプと言っても6種類あり(高度な順にアクセル、ルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トウループ)、難度に差がある。人類が史上初めて4回転という技を手に入れたのは、1988年。アメリカのカート・ブラウニングが成功させた4回転トウループだった。

そこから10年を経た1997年、2種類目の4回転サルコウをティモシー・ゲーブルが成功。その後20年間、偶発的に4回転ルッツを跳ぶ選手が現れるものの、長く4回転ジャンプは「できても2種類まで。1種類でも跳べれば世界チャンピオンを狙える」時代が続いた。

ところが、2014年ソチ五輪以降。中国の天才少年、ボーヤン・ジンが3種類の4回転を武器にフリーで3度、4度と4回転を成功させ、世界を震撼させる。1本跳べば10点以上の基礎点を稼げるスーパージャンプをこう何度も跳ばれては、どんなに美しく舞おうと、意欲的な音楽表現をしようと、勝てる見込みはなくなってしまう。勝つためには、とにかく数多く4回転を成功させることが第一、という時代がやってきたのだ。

 

同じ種類のジャンプはフリーでは2度までしか挑めないため、種類もたくさん持っていたほうがいい。2016年春には、日本の宇野昌磨が4回転フリップを史上初成功。2016年秋には、羽生結弦が4回転ループを史上初成功。先人たちが、10年かけてやっと1種類ずつ増やしていったほどのスーパージャンプは、ほんのわずかの間に、アクセルをのぞく5種類が出そろってしまった。

さらにこの9月には、アメリカの18歳、ネイサン・チェンが4回転ループを成功。すでにルッツ、フリップ、サルコウ、トウループを成功させていた彼は、ひとりで5種類の4回転ジャンプを公式戦で成功させた史上初めての選手となった。

ここまでの展開は、漫画でも荒唐無稽と笑われるだろう。そんな事態に、男子のジャンプはわずか3年弱で進んでしまったのである。