習近平の困った世界観で、日本が想定しておくべき悪夢のシナリオ

その影響力はすでにトランプ以上!?
笠原 敏彦 プロフィール

日本が想定すべき悪夢のシナリオ

最後は、日本にとって最も悩ましい「強軍」と「ナショナリズム」についてである。

習氏は演説で以下のように述べている。

“訓練と戦争準備を強化し、海上の権益維持を有効に遂行し、軍事闘争の準備は重大な進展を遂げた”“今世紀中頃までに人民の軍隊を世界一流の軍隊にする”

中国は世界最強レベルの軍事力を目指す方針を明示したわけである。

21世紀中葉の国際情勢の在り様を想像するのは難しい。米中関係がどう推移していくのかも予測し難い。

日米同盟が現在のような強固な関係を30年後も維持していると果たして断言できるだろうか。米国はすでに、「世界の警察官」たることを止め、同盟国に対して軍事的負担増への圧力を強めているのが実態である。

次のようなシナリオはもはや絵空事ではないだろう。

中国が世界最強レベルの軍事力を有し、北朝鮮が事実上の核保有国となり、日本を含む西太平洋での米軍のプレゼンスは消滅するか、大きく縮小している

安全保障政策とは、想定しうる事態に可能な限り備える、ということだ。

日本は今後、日米同盟の耐久性と信頼性を測りながら、いかに激変が想定される東アジアの軍事的パワー・バランスに万全を期していくのか。非常に困難なかじ取りを求められることは間違いない。

そして、重要なことは次の点だろう。

台頭する中国の国際秩序における意味合いは、米中の覇権争いという文脈で語られることが多い。

米中は、急速な新興国の台頭が戦争を引き起こすという「トゥキディデスの罠」を回避できるかというような論がその典型だろう。

しかし、習氏が「中華民族の偉大な復興」をアピールするとき、その根底にある歴史認識が刺激する中国ナショナリズムの最大の矛先が向かうのは、歴史的経緯から、アメリカではなく、日本の可能性が高いということである。

日本でも、尖閣諸島をめぐる問題などで反中ナショナリズムには火がつきやすい現状がある。両国の反中、反日ナショナリズムがぶつかり合えば、政府が外交を冷静にコントロールできなくなる事態も想定される。

そうなれば、どちらの国益にもならないことは明らかだ。

日本と中国の双方が危機管理の面からも真剣に意思疎通を深める時期にきているのではないだろうか。

トランプ米大統領は、中国共産党大会の結果を受けて、習氏について「かってないほど権力を与えられた。非常に力を持った人物で『中国の王』と呼ぶ人たちもいるだろう」と称賛するかのようなコメントをしている。

英誌エコノミスト(10月14日付)の記事「The world’s most powerful man」
は、習氏がトランプ氏より影響力を持つようになったと指摘するものだが、記事はこう始まっている。

“アメリカの大統領は中国の最高実力者を畏怖の念で語る習慣がある。媚びるリチャード・ニクソンは毛沢東に「あなたの書物は世界を変えた」と語った……ビル・クリントンは江沢民を「先見性がある(visionary)」「並外れた知性の持ち主」と表現している……”

11月5日の日本を皮切りに初のアジア歴訪に臨むトランプ大統領。8日の中国訪問での言動に注目したい。

ふしぎなイギリス

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