photo by Getty Images

習近平の言論統制を、中国のネット市民たちは「冷笑」している

もはや毛沢東時代の中国ではないのだ

共産党大会を茶化した人民たち

「幼稚園の子どもたちが家に帰って親に訴えた。『今日、先生はクラス全員に罰として午前中全員を座らせて、お話を聞かせたんだ。動いちゃいけないし、トイレにも行けない。お昼ごはんも食べられなかった。みんなどんな悪いことをしたのか、分からない』」

「習近平の活動報告があまりに長すぎたため、大会に出席した代表はこっそりと居眠りする者もいた。会議後、記者がこの代表にどうして会議中に居眠りしたのかたずねた。返ってきた答えは『党や政府の呼び掛けに答えるため、先んじて“中国の夢”を実現したのだ!』」

中国で5年に1度の共産党大会が開かれた10月中旬、ネットでこのようなジョークが登場した。冒頭の活動報告は3時間を超える大演説だった。この日、集団で習近平の演説を聴いているさまざまな画像が、微博や微信などの中国版ソーシャルメディアで広がった。

医師や看護婦、患者、高校生や大学生、監獄の囚人、僧侶のほか、なんと幼稚園児までも集団で演説を聴かされた。ネットで公開された写真によれば、複数の幼稚園で同じような活動が行われたようだ。演説の内容も分からない幼児にとっては、上のジョークにあるように何かの「お仕置き」にしか思えなかっただろう。

悪乗りした一部のネットユーザーは、産婦人科の病棟で生まれたばかりの赤ん坊が、習近平の演説のテレビ画面に顔を向ける画像を発表。この他にもある葬儀場が「19回党大会を喜んでお迎えする」と書かれた赤い横断幕を掲げるなど、笑うに笑えない画像もあった。

 

「膨張する」習近平

党大会終了後の26日、共産党機関紙『人民日報』の1面に、習近平の顔写真が異例の大きさで登場した。新たに発足した新指導部(政治局常務委員会)を紹介する記事の中で、1面トップの半分近くを使って習総書記のカラー写真が掲載された。他の6人の集合写真は、その下に小さく載っただけだった。

知人の中国人ジャーナリストは、微信に過去の新指導部人事を紹介する人民日報の紙面を並べ、「権力核心の形成」と控えめにコメントした。10年前の17回党大会では、胡錦濤総書記は他の8人の指導者とほぼ同じサイズで並び、習が総書記に選出された18回党大会でも、習が胡と握手する写真の下に、7人の指導部の顔がほぼおなじサイズで並んでいた。それだけに今回の習の突出ぶりは異様だ。

在米の中国政治学者は、文化大革命時代の毛沢東でさえ人民日報にこんな大きな写真を載せなかったと指摘。この紙面に対して、ある中国のネットユーザーは「いっそこの方がよい」と“習大大”の顔写真が1面トップ全体に広がったパロディ版を公開した。

知人のコメントは、習の権力のこの5年間での膨張ぶりを述べており、まさに権力独占と個人崇拝の強化を表していた。上記のようなジョークも時々は出現するが、ネットを中心とした社会世論は、弾圧に次ぐ弾圧で、極度の閉塞状況にある。

ネット「九不発」――政府を語るなかれ

党大会に向けた世論環境作りのため、ネットでの言論統制は周到に進められていた。その中でも特に当局が重視したのは、今や海外も含め10億人近くが使っていると言われるモバイルアプリ「微信(WeChat)」への規制であり、党大会を目前とした9月に入ってから、矢継ぎ早に打ち出された。

中国のネット管理部門、国家インターネット情報弁公室は9月7日、「インターネットのグループ情報サービスの管理規定」を発表、ネットのグループ討論の管理強化を始めた。

管理規定は、グループ情報サービスを提供する事業者に対して、使用者へ身分情報の認証を義務付けたうえで、法律や国家の関連規定で禁止する情報の散布を禁止し、違法行為があった場合はグループを閉鎖。そしてグループ討論のまとめ役である「群主」に対しても連座して責任を追及するとした。

「微信群」と呼ばれるグループ情報サービスに対しては、これまで当局の管理が比較的ゆるく、共産党や政府を批判する文章、写真や、「城管」と呼ばれる都市管理部門による露天商らに対する暴力行為の動画が多数掲載されていた。

これに続いて11日には、公安当局がネット市民に対し「九不発(9項目の発信禁止)」という新規定を打ち出した。この中には政治的に敏感な話題や、当局が未発表の香港や台湾に関するニュース、内部資料、国家機密などが含まれており、ネット市民への警告が狙いとみられる。

中国メディアによると、「微信のグループは法律により管理が実施され、いかなる発言も法的な責任を伴う」とし、具体的には、(1)政治的に敏感な話題(2)デマ(3)いわゆる内部資料(4)ポルノ、薬物、爆発物(5)香港・マカオ・台湾に関する当局が未発表のニュース(6)軍事資料(7)国家機密に関する文書(8)情報源が不明で偽造の疑いのある警察を侮辱するミニ動画(9)その他関連する法律に違反する情報――の9項目を禁止した。