実は少なくない人が経験している「無職期間」を考察してみた

愉楽と不安が交互にやってきて…
丹野 未雪 プロフィール

社会的に「いない」ことになっていても

それでつぎの「空っぽになる」ことだが、これがなにかはよくわからなかったので今度あらためて栗原さんに聞いてみようと思うが、「無職になりきる」というのはちょっと当たっている。次の仕事を探している状態の連続を「フリー」という肩書ではなく、あえて「無職」ととらえ直して声に出したそのときに、なにが残るのか見てみたかったのかもしれない。

 

仕事はその人の肩書であり、社会参加の時間のほとんどを占めている。階層を示すこともある。

わたしは友人に、仕事の話と同じようなノリで無職の話をしてみた。無職で迎えた昨年末のことだ。

「年末年始はどうするのかという話題に、『郵便局でアルバイトするんだ』というと、みんなちょっと驚く。『高校生の頃したことあるなあ』と馨くんがいった」(本書より)

わたしが逆の立場だったら、無職の中年にこんなにのんきな返しができるだろうか。へえー、と受け流すのが関の山だろう。共通の話題に引き上げ、肯定してくれた友人をわたしは尊敬してしまった。

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こちらが無職だからといって遠慮せず、花見や花火大会、飲み会に誘ってくれる友人がいた。無職という、社会的に「いない」ことになっているわたしがひどく落ち込まずに済んだのは、働いていようがいまいが、いつも通りに迎えてくれる彼らがいたからだと思う。彼らとの時間と職場との往復で見つけたのは、人生はそもそも誰のためにあるのかというごく平凡な問いへの答えだった。

わたしは40歳を過ぎた。時間は限られている。今日も仕事を探している。自分の人生を生きるためには、弱みを見せることができる友人が必要だ。

丹野未雪(たんの・みゆき)1975年宮城県生まれ。編集者、ライター。ほとんど非正規雇用で出版業界を転々と渡り歩く。おもに文芸、音楽、社会の分野で、雑誌や書籍の編集、執筆、構成にたずさわる。双子座。
会社とはなんなのだろう。41歳、未婚、女性、東京でひとり暮らし。不安もあるけど、好きな仕事で形を決めずに生きる。 非正規雇用、正社員、アルバイト、無職を渡り歩いた、39歳から41歳の切実な日々の記録です。 生き方に迷いつつも、懸命に生きる全はたらく女性に読んでいただきたい1冊です