「わろてんか」を「ひよっこ」と同じテンションで見てはいけない

ベタすぎる? いえ、ベタでいいんです
前川 ヤスタカ プロフィール

吉本新喜劇のドラマですやん

こういうご都合主義の展開、関西の人は毎週土曜日昼に見慣れていませんか?

この話は吉本興業の創始者がモデル。吉本新喜劇のドラマ部分を見てると思えばいいのです。

新喜劇は毎回ベタ中のベタのような展開です。

だいたい借金取りが出てきて、実は生き別れの息子みたいな出生の秘密があって、ドタバタドタバタして終わります。

核はギャグと笑いであって、ベースとなるドラマはなにわの人情話的な流れであればなんでもよく、そこに複雑な構成も細やかな心情描写もいりません。

「わろてんか」は吉本新喜劇のようなベタドラマを基礎に、ギャグの代わりに「昭和の少女漫画」をちりばめたもの。

そう思って見れば、ぐっと面白くなってきます。

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幼き日の出会いを運命にてんと駆け落ちした藤吉、資産家の王子様伊能、幼馴染で誰よりも思い続けながら報われぬ風太(濱田岳)、といったステレオタイプキャラがそろう男性陣は「キャンディ・キャンディ」などと重なります。昭和少女漫画の王道は運命に翻弄されながらロマンスを全うする主人公。まさに今の「わろてんか」はそれです。

史実では、吉本せいは夫と死別するので、今後「愛する人の死」はどこかで襲ってくるでしょう(主人公の家庭環境など、すでに史実とはだいぶ離れていますのでそうならない可能性もありますが)。

そう考えると前作「ひよっこ」が記憶喪失という禁じ手ベタ展開を使ってしまったのが大いに悔やまれます。記憶喪失は昭和少女漫画の華なのに。

なんなら記憶喪失をおかわりして、伝説のベタドラマになるのもいいかもしれません。

 

「わろてんか」のもうひとつの特徴が、展開の異常な速さです。

15分ドラマの連続で、毎回何か起こそうとする結果、割とテンポよくいろんなことが片付いていきがちな朝ドラですが、「わろてんか」は輪をかけて速い。

「ナレ死」で話題になった主人公てんの兄、新一(千葉雄大)の死も、倉庫の火事で金策に走る父に「店のことは任せて」→「げほっ」→余命いくばくもありません→死まで1話半。

藤吉の許嫁・楓が「いけず、遠慮のうやらしてもらいまっさ」と、てんへの意地悪加速宣言をしてから、あっさりと改心して家を出て行くまで1話半。

しかし、これも90年代初頭のジェットコースタードラマだと思えば良いのです。

91年のフジテレビ系ドラマ「もう誰も愛さない」は1話でも見逃すとついていけなくなるドラマとして有名になりましたが、そうは言っても1時間ドラマ。「わろてんか」は15分見逃すと、あれ?なぜこの人もういないの?みたいなことがあるので、ある意味もっと速い。

「わろてんか」は「ひよっこ」と同じ視聴態度で見ていると、このノリ、ついていけない……となってしまいます。

いえいえこれは「吉本新喜劇」×「昭和少女漫画」×「ジェットコースタードラマ」なのです。

そういう想定で見れば、いろいろな謎展開が許せるようになり、登場人物たちも愛らしく思えてきます。

隠れキャラのように登場する海原はるか・かなたやシンプル西野などの芸人を探す面白さも込みで、「わろてんか」、これからも楽しんで見ようと思います。