朝ドラ「わろてんか」が始まって早や1ヵ月。
今のところ世間から聞こえてくる声は賛否両論、やや「否」多めといった感じでしょうか。
視聴率についても、ほとんどの朝ドラが1ヵ月くらいは伸び悩むということや政見放送時期だったということを差し引いても、あまり芳しくない数字のようです。
しかし、今回は「わろてんか」を少し擁護したいと思い、ペンを取った次第です。
ひとことで言いますと「いやいや見捨てるのはまだ早い」という趣旨の原稿です。
まず最初に申し上げたいのは、「わろてんか」が苦戦している大きい要因のひとつが、前作「ひよっこ」の存在にあるということ。
「ひよっこ」は、史上もっとも大事件の起きない朝ドラと言われたように、脇役も含めた登場人物の些細な出来事を丁寧に積み重ねた佳作でした。
特別な存在ではない主人公の、特別ではないわずか4年間を描いた、静かでとても展開の遅い朝ドラ、それが「ひよっこ」でした。
それに対して「わろてんか」は、まるで正反対です。
主人公のモデルは吉本新喜劇の創始者吉本せい。
出てくる登場人物は頑固者の父、熱血漢の幼馴染、資産家の王子様、とみなステレオタイプ。
展開も早く、数日前に出てきた登場人物がもう亡くなったり、去っていったりします。
これでは、前作からのあまりの落差に脱落者が出ることはやむを得ない感もあります。
ただよく考えてみてください。
そもそも朝ドラは「わろてんか」のように、女性の一代記を描くのがスタンダードですし、登場人物がベタな人ばかりで展開が速いことも普通です。
「わろてんか」の方がある意味標準的で「ひよっこ」が朝ドラっぽくなかったのです。
まずは「ひよっこ」から頭を切り替えて見ること、これは大事かと思います。
ただ、それにしても「わろてんか」の展開はベタが過ぎます。
・世間知らずの主人公てん(葵わかな)が大阪に一人で出てきてチンピラにからまれ、偶然通りかかった男性がそれを助け、その男性が実は縁談相手の伊能栞(高橋一生)
・幼い頃に会った運命の芸人藤吉(松坂桃李)と、8年間手紙だけのやりとりだったところ、大阪の道で偶然にぶつかった男性がまさにその人藤吉
・藤吉をかくまっていたことが父儀兵衛(遠藤憲一)にばれ、倉庫にとじこめられていたところに、夜な夜なハシゴで藤吉が現れるロミオとジュリエット展開(実は二人は米問屋の長男と薬問屋の長女という意味でも)
・駆け落ちして藤吉の実家に帰ってみるとそこには許嫁(岡本玲)がいて、てんは女中として女中部屋を使えと言われる小公女セーラ展開
こうやってごく一部のエピソードを挙げるだけでも、これが平成29年に放送されているものとは思えないほどのベタさです。
あまりにもなご都合主義と、よくある展開のオンパレード。
しかもそれを「えっ? 都合が良すぎる? いえいえ、それがロマンスというものです」といったナレーションで片付けるのは、いくら朝ドラはこういうもの、と自分に言い聞かせても許容範囲を超えます。
しかし、これを平成29年に放送されている新作ドラマと思ってみるのが、間違いなのです。