「日本人は新築好きだから中古市場が広がらない」はフェイクだった

でも「不動産テック」で流れが変わる
牧野 知弘 プロフィール

でも、不動産の世界は甘くはない

いっぽうで、不動産テックが生み出す弊害や副作用にも注意が必要だ。

オンラインの「価格ボード」が登場したとき、株価と同じように、自分の所有するマンションの価格が毎日上昇を続けるようであれば、毎日がハッピーな気分になるかもしれない。しかし逆に、下降局面、あるいは値下がりするいっぽうになった場合、住宅ローンの返済を抱えた人たちにとっては、見るのも嫌な指標となる可能性がある。

もちろん、リアルタイムで資産価値が失われていく状況を所有者に知らしめ、痛手を最小限にとどめるための次なる行動を促す効果はあるかもしれない。とはいえ、それは当事者にとってあまり楽しいできごとではないだろう。多忙なビジネスパーソンにとっては、日々の厄介ごとを増やす結果になるかもしれない。

 

また、不動産業界の人間から言わせれば、「物件を見もしないで買う」のは、実は最もやってはいけない行為の一つなのだ。テクノロジーを活用して物件を詳しく分析し、正確な情報提供を可能とするのが不動産テックではあるのだが、業界に長く身を置く者としてあえて辛辣な言葉を使って言うなら、すべてをデジタルの世界で価値判断できるほど、不動産の世界は甘くない。

不動産のプロの間では、「それぞれの土地にはその土地独特の匂いがある」と言われる。物件に関する情報提供を受けたときに、私たちがまず行う基本行動は、実際に現地に足を運んで、その土地に流れる独特の匂いを嗅ぎ分けることだ。匂いとは、その土地だけが持っている気配と言い換えてもよいかもしれない。

恐怖感を煽りたいわけではないのだが、「なんとなくやばい」という匂いが不動産にはあるものだ。それはあまり科学的な行動とは言えないかもしれないが、実は意外と不動産の本質をついているケースが多いのである。

そうした匂いをどこまで嗅ぎ分けるかは、今後のテクノロジーの進化にかかっているのだろうが、不動産テックがどこまで魑魅魍魎が跋扈する不動産マーケットに風穴を開けていくのか、その成長が楽しみであることだけは間違いない。

来るべき不動産取引の大変化は、いったいどんなものになるのか?人工知能を用いて、部屋ごとの価格を高い精度で無料試算できるサービス『家いくら?』がスタートした。テクノロジーの進化に、早いうちに触れてみてほしい。(現代ビジネス編集部)

人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。これからは一人ひとりが新しい時代の「住まい方」を考える時代。現代ビジネス編集部はこのたび、特設サイト『住まい方研究所』を開設しました。皆さんが住まい方を考え、選ぶための役に立つ情報を、さまざまな視点からお届けして参ります。