老後人生を狂わす「総額1兆円」過払いの遺族年金という大問題

「返して」と言われたら、どうする?
週刊現代 プロフィール

今回の遺族年金の過払いの場合、先述の通り、500万円以上を突然返還するよう求められることも考えられる。

しかし、「はい、わかりました」と500万円耳を揃えてすぐに返せる年金生活者はよほど恵まれた人だけ。人生設計が大きく狂い、惨めな晩年を過ごす人が大半だろう。

前出の年金機構の広報室担当者によれば、過払い金は、5年で「時効」が成立するため、今後は過去5年分の返還請求を行う予定だという。では、5年間支払いを拒否し続けると、逃げ切れるのか。裁判や差し押さえの可能性はあるのか。前出の広報室担当者が言う。

「返還をいただけない場合、こちらから督促文書をお送りします。受給者に悪意のない過払いについては、差し押さえなどの強制徴収の対象とはなりません。

ただ、度重なる返還請求に応じていただけない場合には、法務大臣に対して、『強制執行』を行う訴訟手続きを求めることができます。実際に裁判に発展した例は聞いたことがありませんが……」

だが今後、年金機構による返還の請求はこれまでより厳しくなる可能性が高い。会計検査院が、年金機構に対して、過払い金を取り戻すよう強く求めているからだ。

 

訴えられることもある

会計検査院が毎年出している「決算検査報告」の最新版(平成27年度分)は、年金機構が過払い金を督促する際の問題点を指摘している。

〈(年金機構)本部は、管理していた返納金債権(過払い金)724件、計7億0855万余円について、消滅時効の完成に至るまで、債務者に対して督促状による督促を行っていたのみで、訪問等による納付督励を全く行っていなかった〉

督促を怠りすぎだ、もっと様々な手段で過払い金を取り戻せ――会計検査院の怒りは激しい。

さらに検査院は、時効を中断するため、場合によっては裁判に訴えても構わないというメッセージを発している。

〈本部は、債務者の資力を考慮するなどした上で訴訟手続により履行を請求することを求めるなどして時効中断の措置を執る必要があった〉

会計検査院の言葉遣いからも、「過払いは返して当然」「受給者のほうに非がある」という思いが透けて見える。しかし過払い金の受給者は、国の機関のミスが原因で訴えられうるのだ。たまったものではない。

これだけの不利益を国民に与えても、まだ年金機構は変わるつもりがなさそうだ。前出の岩瀬氏が嘆く。

「'15年に年金記録情報が流出し、年金機構は『再生本部』を設置しました。しかし、そのコンセプトは『自ら考え、自ら改革する』というもので、『外から介入を受けたくない』という思いが透けて見えます。

今年の9月には、10万6000人の公務員に約598億円の支給漏れがあったことが明らかになっている。抜本的な改革をする気がないのは明らかです」

あなたの受け取っている年金にも、支給漏れや過払いがある可能性は小さくない。常に自分の年金を把握し、確認しておく必要がある。年金機構に任せられない以上、自分の年金は自分で守るしかないのだ。

「週刊現代」2017年11月4日号より