老後人生を狂わす「総額1兆円」過払いの遺族年金という大問題

「返して」と言われたら、どうする?
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そんな殺生な

当然ながら、過払いを受けていた側は納得がいかない。機構の支払いが正しいと思って、何の悪気もなく受け取っていただけだ。「問題ない」という顔で放置しておきながら、いまごろになって「不当利得だから返せ」と言われても、容易に受け入れられないというのが人情というものだ。

 

しかし、法律的には支払いを免れる方法はなさそうだ。梅本・栗原・上田法律事務所の上田啓子氏が言う。

「納得いかない部分もあると思いますが、過払い金の返還は義務です。返還しないと、不当利得と見なされます。年金機構側のミスでも、返さなくてはなりません」

遺族年金ではないが、実際に年金の過払いを返還するケースは散見される。千葉県で事務所を開く社会保険労務士が言う。

「うちの事務所にも、年に4~5人、過払い返還の相談に来る方がいます。とくに多いのが、『加給年金』の過払いを受けているケースです。

加給年金とは、20年以上、厚生年金に加入した受給者に、65歳以下で年金を受給していない配偶者や18歳以下の子供がいる場合、年金にプラスされる『家族手当』のようなもの。

2年前に相談を受けた男性は、奥さんが60歳から年金を受け取っており、本来はその時点で加給年金の受給を停止しなければなりませんでした。しかし、そのことに気づかず、奥さんが65歳になるまで5年間にわたって加給年金の過払いを受けていたのです」

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この男性は書面と電話で年金事務所に来るように言われ、事務所を訪れると、過払いの総額が200万円弱にものぼることを告げられた。社労士に相談したうえ、最終的に返還に応じた。

前出の社労士が続ける。

「一括返済は難しい額でした。返還額が多い場合、年金から天引きで返還することもできます。原則は2ヵ月に一度支給される年金のうち2分の1の額を支払わなくてはならない。生活が苦しい場合には、5分の1、10分の1のこともあります。

この方は、2ヵ月に一度、30万円ほど厚生年金をもらっている方だったので、そのなかから15万円ずつ返還することになった。奥さんの年金があるとはいえ、2年以上にわたって、自分の年金収入が半分になるわけです。相当の打撃だったようで、憔悴していました」