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何人覚えていますか?
安田 峰俊 プロフィール

伝説の中国陸上チーム「馬軍団」コーチのその後

1990年代前半、スポーツ界の話題となった「馬軍団」(馬家軍)を覚えている方はいるだろうか? 1992年のバルセロナ五輪をはじめ、広島アジア大会や世界陸上など90年代半ばの競技会で次々と世界記録を叩き出し、「中国の奇跡」とまで称された伝説の女子陸上選手団である。

その元コーチが馬俊仁氏(73歳)だ。体育教師だった彼は選手経験が一切ないにもかかわらず、1988年に遼寧省の女子陸上チーム監督に就任。「馬軍団」として中国にメダルラッシュをもたらし、国民的英雄となった。ちなみに、1994年には日本の日商岩井が馬氏と提携して「馬軍団ドリンク」を発売し、巨人の桑田真澄氏が愛飲して話題になったこともある。

だが、馬氏の指導は当時から賛否両論があった。10~20代の女子選手に男女交際禁止令を厳命し、1日30キロ以上の走り込みを強制。常人の3倍以上の食事を食べさせ、スッポンの生き血や冬虫夏草を飲ませていたほか、ドーピング疑惑も常に噂されていた。

 

結果、アトランタ五輪金メダリストの王軍霞が1994年に軍団を脱退するなど、猛特訓と怪しいトレーニングに耐えかねた教え子の反乱が続発。薬物使用疑惑も絶えず、ついに2000年のシドニー五輪では中国五輪委が馬軍団の代表選手枠を取り消し、やがて馬氏は陸上界を去ることとなった。

……ところがその後、馬氏はなんと1匹の価格が10万元(約170万円)にもなる高級犬種、チベタン・マスチフのトップブリーダーに転身。馬軍団ならぬ犬軍団の総帥として繁殖センターを経営し、第二の人生でひと花を咲かせることとなる。

インタビューで明かされた馬氏のその後

2010年11月ごろ、私は講談社『フライデー』の記者として馬氏に電話インタビューをしたことがあった。以下、当時の掲載原稿を多少修正したものをご紹介しておこう。

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――陸上界からトップブリーダーに転身された理由は?

:2004年の馬軍団の解散当時、ワシはすでに60歳だった。退職を機に、余生を「犬」という趣味につぎ込もうと決めたのさ。

――ご経営されている繁殖センターの収益は?

:儲けか。計算したことがないから知らんわい。

――今後のビジネス展開は?

:2010年11月8日、繁殖センターを北京から地元の遼寧省大連へ移転した。名も「馬俊仁チベット犬観光パーク」と変えて、観光地化していきたい。日本からのお客も大歓迎だ。うちの犬をぜひ買ってくれ。この馬俊仁の育成能力に全幅の信頼を置いていただきたい。

――陸上選手とチベット犬、どちらの育成が得意なんですか?

:どちらもお手の物だが、犬は“裏切らない”からねえ……。訓練の甲斐があるぞ。フフフ。

――現在、広州アジア大会が開催中(注.取材時点)ですが、中国の陸上選手団に一言。

:陸上の話は勘弁してくれ。現在のワシは一介の愛犬家にすぎんのだ。

――それはドーピング疑惑の件が原因なのでしょうか?

:ノーコメントだ。

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とまあ、実に食えないおっさんだったが、彼の人生はその後もなお変転する。2013年に成立した習近平政権のもとで贅沢禁止の風潮が強まり、チベタン・マスチフの価格が大暴落。今回、取材のため馬氏のチベット犬センターを調べてみたところ、ホームページがノットファウンドになっていた。

※最近の馬俊仁氏。チベット犬飼育についても「カネ儲け目的のイヌ転がし」などとメディアに書かれ、大変である。『騰迅体育』より。

2015年には元選手の王軍霞からコーチ時代の性的虐待を告発されたり、2016年に別の元選手がドーピングを強要されたことを証言したりと、70歳をこえた現在もなお騒動の渦中にある馬氏。なんとも浮き沈みの激しい人生もあったものである。