ごく普通の家庭から世界レベルの「10代ゴルフ選手」が育った理由

畑岡奈紗、新たなヒロインの肖像
週刊現代 プロフィール

ゴルフが好きだ、大好きだ

仁一さんは娘のゴルフについてはまったく口を出さず、母・博美さんも最初こそスイングを教えていたものの、すぐに教えることはなくなった。畑岡は自分の意志でゴルフにのめり込んでいったのだ。指導者につかず、独学で練習を始めたが、畑岡は1年後にはスコア70台を出していた。

仁一さんが続ける。

「奈紗がゴルフを始めたころ、グリップが擦れて手に血豆ができたんです。練習の途中、その血豆が破れて、指に血が流れていました。痛かったと思うのですが、本人はそれを見てケラケラ笑って、練習を続けていました。それぐらいゴルフが好きだったのだと思います。

中学ではゴルフを続けながら、陸上部に入部しました。私が学生時代、陸上で走り高跳びをやっていたので、その影響です。奈紗は200mで県大会7位が最高ですね。

中学校3年間は放課後、陸上部の部活が18時ぐらいまであり、帰宅してから夕食後に19時から2時間ぐらいゴルフの練習です。それで家に戻ると宿題に取り組むという生活を続けていました。中学校では生徒会の役員もやっていました。いま思えば、3年間よくやったなと思います。

私は教員免許を持っていますし、勉強に関しては目を光らせていました。でも、弱音はいっさい吐かなかったですね。教育方針に特別なものはありませんが、挨拶をちゃんとすること。プロになってからは、礼節をより重んじるようになったと思います」

 

中学3年生からは、中嶋常幸が主宰する「ヒルズゴルフ トミーアカデミー」で指導を受けた。

同アカデミーの事務局長・林祐樹氏が言う。

「ここでは年に4~5回、生徒を集めて合宿をし、終了後にレポートを提出させています。畑岡さんのレポートは、中嶋プロが伝えたいポイントを十分理解したうえで整理された素晴らしい内容でした。

いまどきは、練習でボールを打つ合間に携帯電話をいじる選手も見かけますが、彼女はそんなことはいっさいない。集中力があって、時間の使い方も上手な選手だと思います」

天性の才能に加え、野球や陸上で養われた運動能力と圧倒的な練習量、そして「ゴルフIQ」の高さが、強さの秘密だ。

'16年10月、畑岡はアマチュアながら、国内最高峰の大会「日本女子オープン」で優勝する。この大会の練習ラウンドでツアー関係者は、畑岡のグリーン上での光景に驚かされた。

彼女は練習ラウンドの際、グリーン上の4~5ヵ所で水平傾斜器を使って傾きを確認し、入念にメモをとっていたのだ。

フェアウェイでも、びっしりメモをとりながらラウンドしていた。ピンから逆算して、どこにボールを落としたらいいのか、その戦略を立てるために情報を集めていたのだ。

畑岡は高校2年生でナショナルチームに選ばれているが、そこで学んだ戦い方だという。

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日本ゴルフ協会で育成を担当する内田愛次郎氏が語る。

「『コースマッピング』というのですが、コースのあらゆる情報を収集して、打っていいところ、打ってはいけないところを把握するんです。

ラウンドを重ねれば重ねるほど、精度の高いノートを作っていくことができます。これを貪欲に実践しているのが、畑岡選手です。

特にグリーン上では『ゼロライン』を重要視しています。バーディが取りやすいラインは、上りのストレートラインになります。これをゼロラインと呼び、このラインがグリーン上のどこにどれだけあるのかを把握するんです。

炎天下でも、彼女は汗を流しながら、たくさんメモをとる。その重要性を理解しているので、かぎられた条件の中で、いかに情報をとるかということに努力を惜しまないんです」

少しでも良いスコアを出すために常に知恵を巡らせ、戦う準備に余念がないのだ。

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