ブラック企業がいまだにはびこる「4つの悪しきメカニズム」

「ゼロ」に立ちはだかる高い壁
新田 龍 プロフィール

(2)雇用慣行の問題

<ポイント>
・日本独自の「メンバーシップ制」

 
日本の場合、正社員はいい意味で皆平等だ。会社はいわばファミリーのような位置付けで、その社風に合った人柄や可能性を持つ(と判断された)人が入社する。

このシステムの良い点は、「全員が幹部候補」という建前で、頑張って組織に貢献すれば、誰しもがトップマネジメントに就ける可能性があるところ。また擬似的なファミリーゆえに、会社は従業員に「安定」や「福利厚生」を提供し、彼らの将来のキャリアプランも含めて面倒を見てくれるのだ。

しかし、そんなメリットと引き換えに正社員は重い責任を負い、会社の裁量次第で残業、転勤、出向、転籍などを命じられ、実質的にずっと会社に拘束され続けるシステムであるともいえる。

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この点、日本と諸外国で大きく違うところだ。日本以外の国では、会社に存在する個々の業務について職務要件が詳細に規定されており、その要件を満たせるだけの能力やスキルを持った人が採用される。

いわば「人に仕事がつく」形なので、会社主導のローテーションは存在せず、就いた仕事をずっと続けていくことになる。

マネジメントはごく一部の高給エリートが担い、彼らは超絶ハードワークと引き換えに億単位の報酬を得る。一方で一般ワーカーは、エリート管理職層が立案した経営判断に従って決められた業務をこなすことが期待される。

彼らの役職や報酬はさほど変化しないかわり、残業は基本的に存在せず、ワーク・ライフ・バランスは充実している。「欧州の労働者」と聞いてイメージする「丸々1ヶ月間のバカンスを満喫」といった働き方は、こちらの一般ワーカーに当てはまるものだ。

 

どちらが良い・悪いといった話ではなく、日本はこのシステムのメリットを活かして長年うまくやってこられたのは事実である。

スキル経験に乏しい新卒学生でもまんべんなく就業機会が得られ、多様な職務経験を積んでゼネラリストとして育成される。会社にとっても人材配置の自由度が高く、都合のよいものだったが、キャリア形成を会社に丸投げすることがリスクとなり、働き方の多様性が求められるこれからの時代には、この慣習も見直しが必要なタイミングかもしれない。

現在こそ、正社員として1社に職務専念するという働き方が主流であるが、副業を許可する企業も増えつつある。今後は業務委託的に、複数企業のプロジェクトを掛け持ったり、曜日毎に異なる企業に出勤したりするといった光景も普通になっていくかもしれない。