ブラック企業がいまだにはびこる「4つの悪しきメカニズム」

「ゼロ」に立ちはだかる高い壁
新田 龍 プロフィール

(1)労働行政・司法の問題

<ポイント>
・工場労働者前提の労働法規
・「特別条項」という実質ザル法
・「企業に社会保障を一部担わせる」という考え方
・罰則が甘い
・労働基準監督署も人員不足

日本の労働基準法は、諸外国と比較しても緻密に規定がなされているものの、実質的には抜け穴が存在するため、違法行為に対する抑止力として機能していない面がある。

労働時間が良い例だ。労働基準法では「1日8時間、1週間40時間まで」と明確に規定されているが、それが法的な上限だと捉えている人は多くないだろう。しかるべき手続きさえとれば、青天井で残業させることが実質的に可能になっているからだ。

また、日本の労働法制と司法判断においては長らく、「企業が雇用を丸抱えし、それを行政が支援する」という考え方があった。それ故、雇用を危うくする「解雇」についての規制は比較的厳しいが、他の違反には甘めな司法判断となっており、労基法違反に対する抑止力になっていない面がある。

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ブラック企業にとっての労基法違反はいわば「スピード違反」と同じ。「なんとなく違法とは分かってるけど、みんなやってるし、捕まらないし、万一捕まったとしても罰金払えばいいんでしょ」と開き直っているものだ。

 

実際、労働基準法違反行為が発覚しても、それが即犯罪扱いになるわけではない。まず労基署による指導がなされ、それでも改善しない悪質なケースは書類送検となる。そこで起訴となり、有罪判決が出てようやく実刑となるのだ。

しかも、その量刑としては多くが「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」だから、場合によっては「罰金を払ったほうが、キッチリ残業代を払うよりもマシ」と考えるブラック企業経営者が出てきたりする。

解決のための第一歩として、既に2019年度の施行を控えているのが「労働時間の上限規制」だ。これまで実質青天井で、かつ罰則もなかった残業時間に関して、原則として月45時間、年360時間が法的にも上限となり、違反した場合には罰則が与えられる。これは大きな進歩であるといえよう。

あとは「インターバル規制」(当日勤務終了から次の日の勤務開始までの間に決まった休息時間の確保を義務づけること。すでにEU加盟国では1993年から「24時間につき最低連続11時間の休息時間」を義務化している)の導入や、労働基準法違反の場合の厳罰化(罰金額を現状の10倍程度に増額)、その場合の罰金を取締役個人のポケットマネーから支払わせるようにするなど、抑止力となり得ることはいろいろ考えられよう。