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日本から姿を消した「北朝鮮工作員」が、騙した「妻」に贈った小包

私が出会った北朝鮮工作員たち 第3回
竹内 明 プロフィール

すべてが終わって、届けられた「小包」

北朝鮮工作員の自称「朴」(のちに対外情報調査部所属の「チェ・スンチョル」と判明)と、A子やその子供たちとの生活も、こうして突如、終焉を迎えた。

冒頭に紹介した、KGBの元秘密工作員ジャック・バースキー氏は、旧ソ連本国から帰国を命じられたとき、放置されることになるアメリカでの妻子の将来を考えて、命令を拒否、とどまることを選択した。

「私がモスクワに戻ったら、妻と子供はどうなってしまうのか、と考えました。生活が成り立たなくなります。だから私は『感染症にかかってアメリカで治療する必要がある。KGBを退職したい』と申し出ました。それきり連絡を絶ったのです。もちろん暗殺されることを心配しましたよ」

バースキー氏は、私にこう語ってくれた。彼は暗殺のリスクをおかして、家族との生活を優先したのだ。ときに冷酷な脅迫や破壊活動を行う工作員であっても、一皮むけば感情を持つ生身の人間であることが、スパイという仮面を脱いだバースキー氏の坦々とした言葉から、強く感じられた。

 

日本に潜伏していた工作員「朴」は、14年もの間、ともに暮らしたA子と3人の子供にどんな感情を抱いていたのだろうか。スパイ活動の道具とみなしていたのだろうか。それとも、バースキー氏のように心の底では愛情を抱いていたのだろうか。

事件が発覚した後、A子のもとに、ひとつの小包が届いた。それは大阪のデパートから送られた、ささやかな贈り物で、差出人欄には「小住健蔵」と書かれていたという。

※自称「朴」ことチェ・スンチョル工作員は、今回取り上げた西新井事件および蓮池薫夫妻拉致事件で現在も国際手配中である。参考:警察庁「国際手配被疑者一覧」http://www.npa.go.jp/bureau/security/abduct/wanted.html

(第4回はこちらから

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