村田諒太が勝つためには「考えないこと」が必要なのかもしれない

「大丈夫、ぶっ飛ばしますよ」
森合 正範 プロフィール

がむしゃらな村田が見てみたい

もちろん、練習段階では「考えること」が必要だ。実際、村田は「100ラウンドスパーリングをしていれば、試合で絶対に1回は同じ場面がやってくる。スパーで悪かったところを修正できていれば、それが試合に生きる」と語る。その点では浜田代表も「村田の考える取り組みは素晴らしい」と称賛する。

しかし、いざゴングが鳴り、リング上で相手と対峙したら、「考えること」が邪魔となる。余分な情報があると、そこに意識がいってしまう。あと一歩が踏み出せない。ワンテンポ遅れてしまう。

私は村田の意外な苦悩を知り、心の中でつぶやいた。「考えることは、ボクサー村田の大きな利点だと思っていたが、本人からすればむしろ足かせになっていたのか。それは全然見えていなかったな…」。

前戦は、考え過ぎた故に負けてしまった…?【PHOTO】iStock

常日頃から「考えること」が好きな村田がリング上では考えないで闘えるか。それが再戦の一つのテーマとなるだろう。もう一度尋ねてみる。

――試合中に考えてしまう?

「考えますね。考えるときはだいたいダメですね。ボクサーで考えていて良いときなんてないでしょ。試合でもよく見るし、スパーリングとか見ていて思いません? これは考えていてダメになっているなと。僕のスパーでもよくあるし…。それにね、ああしよう、こうしようと考えていると(深く集中する)フロー状態にはなれないですよ」

――それでは目指すべき闘いは?

「結局、体に刻み込まれているかどうかなんです。この動きをしようと考えているなら、それは意識の段階ですよね。でも、何も考えず、無意識の中でその動きをしているのが一番いい。だから練習では完全決着を目指して、倒しにいくスタイルを徹底的にやって、体に覚えさせておく。試合では倒しに行こうと考えたら良いことがない。自然とリングに上がって、自然体でいつも通りにやる。それくらいの感じがいいと思う」

 

わずか5カ月後のダイレクト・リマッチ。31才の村田と33才のエンダム。両者のスタイルは確立されており、試合展開も大きく変わらないだろう。

「結局、何を取るかなんです。スポーツというのは代償するわけですよ。手数を取ったらパンチ力は減るし、160㌔投げる投手がコントロールを意識したら153㌔くらいになるだろうし。そういうものなので、僕は右(ストレート)の力を選択しているわけです」

手数で競うつもりはさらさらない。前に出て右ストレートを狙う。一方のエンダムは距離を取りながら手数を出してくるだろう。前戦同様、村田の右の強打で相手を後退させる場面が必ずやってくる。そのとき、考えずに体が動くか。獲物を追うがごとく、ラッシュをかけられるか。5月の試合とは違う、がむしゃらな村田がみたい。

「大丈夫です。ぶっ飛ばしますよ」

考えることもなく、感情をあらわに吐き捨てるように言った。眼光鋭くやんちゃな表情は、論理的に語る「闘う哲学者」とは別の顔。それもまた村田の大きな魅力である。