東京五輪「オリ・パラ同時開催」の経済効果を試算してみた

【シリーズ人権と数字③】
石井 麻梨 プロフィール

レガシー効果も大きい

他方、コストダウンする項目もあります。開会式・閉会式の一本化により式典開催費が削減されるでしょう。

なお、オリンピック・パラリンピックで同じ会場を使用する14競技については、オリンピックとパラリンピックの競技入れ替えの際に用具を出し入れしなければならないものもありますが、大幅な設備の変更を要するものはほぼないと考え、追加的な設備投資コストは発生しないという前提を置くこととします。

 

全体の開催期間は、現行のオリンピックとパラリンピックの会期に準ずる長さで進行することから、競技会場の追加的な建設は原則必要ありません。

以上を踏まえて同時開催の定量的なインパクトを算出した結果、売上が約1,077億円アップし、同時にコストが約36億円アップと計算されます。両者を合わせることで算出されるインパクトを見ると、会期中だけでも1,041億円の経済効果が見込まれることが明らかになりました。

さらに、会期後に東京にもたらされるレガシー(遺産)効果も無視できません。東京都の試算によると大会後10年間のレガシー効果は約27兆円程度と見積もられていますが、東京がオリンピック・パラリンピック同時開催を世界で初めて行った都市となることによって、当該効果はさらに増加することが予想されます。

2020年東京大会の開催方法については、既に相当程度が確定された段階となっており、今回想定した「オリンピック・パラリンピック同時開催」が議論の俎上にあがる可能性はほぼないでしょう。しかし、人権的な見地で提唱されたこのアイデアも、今回述べたような様式で「十分な経済合理性を持つ」と立証されれば、近い将来現実となるかもしれません。

人権への対応が新たなビジネスを作る。社会や企業がそう認識することが、社会課題の解決を加速する糸口になるはずです。本シリーズが伝えた「人権と数字」が、更なる人権課題解決の動きに繋がれば幸いです。

羽生田 慶介(はにゅうだ けいすけ)
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー/執行役員 レギュラトリストラテジー リーダー。経済産業省(通商政策局にてアジアFTA・EPA交渉担当),キヤノン(経営企画,M&A担当),A.T. カーニー(戦略コンサルティング)を経てデロイト トーマツ コンサルティングに参画。著書に 『最強のシナリオプランニング』(共著:東洋経済新報社)、『世界市場で勝つルールメイキング戦略』(共著:朝日新聞出版)がある他、国際通商動向に関するテレビ・雑誌・新聞等での識者コメント多数。多摩大学大学院 ルール形成戦略研究所 客員教授
石井 麻梨(いしい まり) デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 コンサルタント。中央官庁(内閣府、財務省(内閣府より出向))において経済財政政策の分野での政策の企画立案や、政策・制度の調査業務等に従事した後、デロイト トーマツ コンサルティングに参画。ロンドン大学 LSE(London School of Economics and Political Science)行政学修士号(国際開発コース)