500万年後、人類から「オス」が消滅する! その理由

「遺伝子のゴミ」が人類の秘密を解明
小林 武彦 プロフィール

興味深いことに寿命に影響を与えているのは、リボソームRNA遺伝子と呼ばれる重要な遺伝子の非コードDNA領域でした。リボソームRNA遺伝子は同じ配列がなんども繰り返している反復遺伝子で、ゲノム中でも変異が起きやすい領域です。

 

この遺伝子を拡大して細かく見ると、必要な遺伝子領域と不要な非コードDNA領域が交互に並んでいます。また、その非コードDNA領域に結合してリボソームRNA遺伝子を壊れにくくしているSIR2(サーツー)遺伝子も、やはり寿命に関わっています。SIR2遺伝子は、マウスにも存在してその働きを強めるとマウスの寿命も延びることが報告されています。

人類の未来にはオスはいない?

染色体という名前を聞いたことがあるかと思います。細胞の中でDNAを束ねている構造です。染色体には性別を決めるものがあり、人間の場合、Y染色体がオスをつくっています。じつはこのY染色体、壊れる速度が他の染色体よりもずっと早く、500万年もすれば消えて無くなるという予測もあります。

つまりこの世からオスが消えるのです!

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その鍵を握るもの非コードDNAです。非コードDNAは変わりやすく進化を加速する働きがあるからです。

今現在生きているヒトは、500万年後は誰一人として生きてはいないので、どうでもいいといえばいいのですが、男子のいく末が気にならないといったら嘘になります。非コードDNAのことをもっとよくしれば、人類の将来の姿がより詳しく予測できるかもしれません。

オスがこの世から消えるかもしれないのは寂しいことですが、非コードDNAの最大の仕事は、遺伝子を変化させり、数を増やしたり、場所を変えたり、組み合わせを変えたりして「多様性」を生み出すことです。

多様性は進化の原動力となり、それは生物がこの地球で生き残るために最も重要な性質です。個々の個体で個性があること、これこそが地球誕生以来、生物が生き延びてこられた、最大の理由です。

本書ではこの謎に満ちた暗黒領域「非コードDNA」に光をあて、最新の情報をもとにその役割について解説し、人類の未来について考えます。