復讐のために、不倫相手の子どもを無断で連れ出し置き去りにした女

私、絶対に引き下がらないから
亀山 早苗 プロフィール

このままおとなしくしてると思うなよ?

そこでターゲットになったのが彼の子どもである。3歳年下の彼には、当時、中学生の年子の息子たち、そして5歳になったばかりの娘がいた。いちばん下の子だけ年が離れていたのだが、その子に目をつけたのである。

「最後に生まれた女の子ということで、彼は本当にかわいがっていた。娘に何かあったら彼はショックを受けるはず。そこで幼稚園に通う娘を連れ出してみたいと思ったんです」

最初は軽い気持ちだった。たまたま幼稚園に下見に行くと、彼からイヤというほど写真を見せられた子と同じ顔かたちの女の子がいた。しかも偶然、彼女がひとりで園の門のところでぼうっとしていたのだ。

 

「『アヤコちゃん?』と声をかけると頷いたんです。かわいい子でした。とっさに『ママのお友だちなんだけど、今日は帰ってくるようにってママに言われたの。一緒に帰ろ』というと素直についてきて。車に乗せて『ママがね、どこかで遊んでおいでって言ってるのよ。どこに行きたい?』と聞くととある遊園地の名前を挙げたんです。遊園地に連れていって一緒に遊んで。うちは息子がひとりなので、娘がいたらこんな感じなんだなあと考えていました」

もちろんその頃には、彼の家や幼稚園ではとんでもない騒ぎになっていた。だがシオリさんは、そんなこととはつゆ知らず、彼の娘を連れ回した。

「さすがに夜になってくると彼の娘はぐずり出すし、私もいったい何をしているんだろうという気持ちになってきて。このまま自宅へ戻るわけにもいかない。彼の子がトイレに行きたいと言ったのを機に、そのままショッピングセンターに置き去りにしてしまいました。子どもがいなくなったことだけで、彼にはじゅうぶんショックだろうと思ったし」

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家に戻ってしばらくすると、彼から久しぶりに電話がかかってきた。娘がいなくなって取り乱しているようだ。

「お前か、お前がやったのかと騒ぎ立てていました。その慌てぶりは、私の知らない彼でした。私はひと言もしゃべらずに電話を切ったけどあの瞬間が、私の気持ちがもっとも満たされたときでしたね」

シオリさんはほぼ無表情で淡々と話した。そこから喜怒哀楽は読み取れない。

もちろん彼の娘は保護され、その日のうちに帰ってきた。警察にも通報されていたため、その後、いろいろあったのだが、詳細は控える。結局、この恋はお互いの配偶者の知るところとなった。

「当然かもしれませんが、うちは今も冷戦状態。夫からは息子が成人したら離婚だと言われています。噂によると彼のところは一時は奥さんが実家に戻ったりしたようですが、今は戻ってきているみたいです。彼のSNSをこっそり見ているんですが、最近では家族でどこかに出かけたりもしている。私がこのままおとなしくしていると思うなよとときどき、心の中でつぶやいています。あ、もちろん何かやらかすつもりはありませんけどね」

ほとんど刺し違えたといってもいい状態だが、彼女に後悔はないという。あのまま引き下がっていたら、恨みつらみが増幅されて、彼を本当に刺してしまったかもしれないから、と彼女はぽつりとつぶやいた。

大人なのだから、不倫にいつか別れがくることも想定していたはずだ。彼がもう少し彼女に気を遣って別れていれば、こうはならなかった。しかし、彼女もそこで愛情を憎悪に転換させずにさらりと彼を切り捨ててしまえば、こんなことにはならなかった。

今さら「たられば」を言ってもしかたがないのだが、不倫だからこそ、別れ際には互いの人間性と精神力が試されるとつくづく考えさせられる。

男の裏切り、心変わり…別れた男、不倫相手、夫…行き場を失った女の想いが向かう果て。ボンド、下剤、剃毛、暴露、破壊、尾行…実録!復讐劇の数々。