復讐のために、不倫相手の子どもを無断で連れ出し置き去りにした女

私、絶対に引き下がらないから
亀山 早苗 プロフィール

まず彼の会社の広報に一部始終を伝えた。エクセルが苦手だった彼が社外秘の書類をマナミさんに作らせていたこと、離婚手続きを進めている証拠として保険証の“家族の離脱届”など、総務担当役員あてに証拠を提出。彼は役員会にかけられ、部長から平社員に降格となった。

お金で解決するはずが、その金も支払われなかったので、弁護士に依頼して給与差し止め措置を会社あてに決行。総務には「トラブルを抱えた人」の印象が強まっただろう。

 

自宅に残っていた彼の荷物は、なるべくすかすかにダンボールに詰め、やたらとダンボールの個数を増やして会社宛に送った。ダンボールには「室内遺留品」と大きく太い字で印刷した特大の紙を貼りつけた。業者にことの真相を話して、彼の勤務先の目立つ場所へ荷物を並べてほしいと頼んだ。業者は『彼が汗だくになって貼り紙を剥がしてるぞ』などと実況までしてくれたそうだ。

「それから透明のビニール袋に、買ってもらったカルティエのエンゲージリングと証明書、領収書まで入れて自宅に送りつけました。当然、奥さんも見たでしょうね」

そこまでやって、彼女はふっと虚しくなったという。彼と過ごした月日は、楽しかったし充実もしていた。なのにどうしてこんなことになったのか……。そんなとき、彼に紹介されたことのある同僚から連絡があった。会ってみると、「同じ会社の同僚として、また友人として情けなく思う」と謝ってくれた。そして「上司も決してもう彼には役はつけないと言っていました」と伝えた。

共通の知り合いからは、彼ら夫婦がうまくはいっていないとも聞かされた。社会的にも家庭的にも、もう彼が浮かばれることはないはずだ。

「怒濤のように復讐して、その後は私自身もかなり気持ちがへこみました。あれから時間がたって、ようやくこうやって人に話せるようになってきたんです」

復讐するほうも神経が高ぶったり緊張したりするのだろう。彼女のやり方は合理的ではあったが、一時は本気で愛した人への復讐なのだ。胸に重いものが澱むに違いない。

彼に致命傷を与えたくて

既婚同士の不倫の場合も、別れ方によって女性を復讐へと追いやることがある。立場が同じならすんなり別れられるとは限らないのだ。

「4年もつきあっていたのに、ある日突然、彼からメールで一方的に別れを告げられたんです。もちろん、私も彼のことが好きで恋に落ちてしまったのだけど、それでもつきあっているときにはずいぶん無理をしました。彼があまりお小遣いがないというから、私もパートに出てその収入をデート代に当てたりもした。

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子どもが受験のときだって、彼がどうしても会いたいというから、子どもに夜食を用意して夜中にこっそり家を抜け出し、彼の車の中で抱き合ったことも。既婚同士の恋には無理がつきものだと思っていたし、無理してもお互いに会いたいから会う関係をいとおしいとも感じていた」

シオリさん(47歳)が、子どもの習いごとで彼と知り合ったのは5年前。彼もまた子どもを同じ場所に通わせていた。子どもたちは同じ中学で、家も車で10分ほどの距離だ。つまりはご近所不倫。リスクは大きい。それでも4年続いたのは長いといえるだろう。彼女が言うように裏で双方の努力があったからだ。

「子どもたちが大きくなったら、もっと自由に会えるようになる。それまでがんばろうと話していた。それなのに理由も言わずに一方的に別れるなんて、私を侮辱しているとしか思えなかったんです」

女が復讐に走る要因のひとつに、自分が侮辱された、ないがしろにされたという怒りがある。プライドの問題なのだ。

「どうしたら彼がいちばんショックを受けるか、致命傷を与えたい。そればかり考えていました」