まもなく、日本列島を「死有地」が覆い尽くす

所有者不明の空き家や山林が急増中
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ちなみに「死有地」化が進む地方の山林部では、所有者が不明なだけでなく、そもそも土地の境界線がどうなっているかすらもわからないことが問題になっている。

それはどういうことか。数ヘクタール規模で相続することも多い山林の境界線は、「木に書いた目印から大きな岩のあるところまで」などと、権利者間の口約束で長い間まかりとおっていたところが多い。

境界線を改めて確定するのも骨が折れる作業で、その境界線の周辺に住む権利者の合意のもとで進めていくしかない。

その相手側の土地がすでに「所有者不明」になってしまっていたら、さらにその作業は困難になる。きちんと境界線を確定し、正直に登記の書き換えを行ったとしても、待っているのはほとんど慈善事業に近い土地管理である。

 

寄付もできない

そのような山林は、実際のところ資産価値としてタダ同然だ。持ち続けた場合の固定資産税や維持費のコストを考えて、利益が出ないどころかむしろ出費になったとしても土地を手放す人もいるほどである。

「土地の相続登記には登記料がかかり、宅地の場合では登録免許税などの諸経費を合算すると20万円以上になることもあります。現行では相続登記に期限はありませんから、ほとんど資産価値のない土地を相続した人が手続きせず、そのまま放置してしまうケースがあるのです」(行政書士の寺田淳氏)

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やりくりのしようがない土地は、相続放棄をして国に返還する方法もある。ただ、そのためにはやはり相続人全員の了承が必要で、おまけに土地以外も含めた全財産も放棄しなければならず、ハードルが高い。

土地を自治体に寄付するという手段もあるが、それは公共事業などに利用できる土地に限られる。「死有地」のほとんどが、そのような有用な土地ではない。

もし法律が改正され、よりスムーズに土地の相続放棄が実現できるようになったとしよう。そうなれば、この国には大量の「国有地」が誕生することになる。固定資産税収入も得られなくなった国有地の管理コストを負うのは国民だ。結局、これも「死有地」と化すことに変わりはない。

富士通総研主席研究員の米山秀隆氏は次のように語る。

「所有者不明の土地が急増したのは、やはり人口減少にともなって全国的に地価が下落し続けていることにあります。いま地銀では『空き家解体ローン』という商品が売り出されているほどで、せっかく建てた家を取り壊すために借金をする高齢者すらいる事態です。

人が減れば産業も衰退し、街として魅力がなくなるから、より都心への人口流出に拍車がかかる。こうした負のスパイラルが続く限り、土地を捨てる人は増え続けていくでしょう」

いずれにせよこのまま「死有地」が日本列島に増殖し続けるのは確実だが、そのなかでわれわれがこれまで当たり前と思っていた生活様式は、少しずつ変化を遂げていくことになる。

今後、行政は徹底的にコンパクトシティ化を図っていくだろう。人口流出で空き家の問題が深刻化した北海道夕張市が'07年に財政破綻したが、その後は市内中心部の公営住宅に遠方の住民を移住させるなどの都市計画を進めている。

一極集中化には賛否が分かれるところかもしれないが、自治体を維持するためには仕方あるまい。

「また、'14年の都市再生特別措置法の改正で、居住誘導区域以外での開発に制限がかけられるようになりました。

これにより、デベロッパーは区域外での開発に手を伸ばしにくくなります。そうなると、地方都市では『人が住めるエリア』とそうでないエリアの線引きがよりいっそう進んでいくことになります」(前出・米山氏)

いま「限界集落」と呼ばれている地区は当然として、比較的都心に近い場所でも「捨てられる土地」が増え、人がまったく住まないエリアができる――4軒に1軒が空き家となる2028年、にわかに想像しがたい現実に我々は呑み込まれることになる。