悲惨な「東名高速死亡事故」似た経験をした犯罪心理のプロが思うこと

彼に施すべき「治療」は何か?
原田 隆之 プロフィール

被疑者分析:知っておきたい8つの危険因子

ところで、この被疑者はどのような人物なのだろうか。

まず、パーキングエリアでの迷惑駐車という、事件の発端を考えただけでも粗方想像はつく。

周囲の妨害になるような迷惑停車を平気でするような人物である。多くの人は、迷惑とは感じながらも、関わり合いになることを避けて素通りしたのであろうが、正義感が強かった被害者は彼に注意した。

しかし、それに対して詫びるわけでもなく、自分の迷惑行為を棚に上げて逆恨みをし、執拗に追い回すというのだから、尋常ではない。非常に強い自己中心性、爆発性、攻撃性が見て取れる。

さらに、怒りに任せて異常な危険運転を平気でするのであるから、ルール無視、反社会的態度が顕著である。

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このような事件の概略を聞いた時点で、私はこの男は、これまでも数々のルール違反、法律違反を繰り返し、社会のあちこちでトラブルを起こしていたに違いないと推測していた。

そして、予想通りというべきか、その後の続報では、事件の少し前にも複数の危険運転を行い、同様の進路妨害や暴行などを行っていたことが伝えられている(もっともこれらが事実であるかどうかは、現時点ではわからない)。

最近の犯罪心理学では、膨大な研究に基づいて、犯罪に至る人間に関する数々の危険因子(リスクファクター)が明らかになっている。

そればかりか、その影響の度合いが数値化されており、きちんとアセスメントすることによって、80%ほどの正確さで再犯に至る危険度も予測できる。

 

カナダの犯罪心理学者、アンドリュースとボンタによれば、主な危険因子は8つあり、それは過去の反社会的行動歴(ルール違反)、反社会的交友、反社会的パーソナリティ、反社会的態度、学校・職場での問題、家族の問題、薬物乱用(アルコールを含む)、余暇の不健全な活用である。これらを称して「セントラル・エイト」と呼ぶ。

この被疑者の場合、報道された内容を元に先に分析したところから、過去の反社会的行動歴、反社会的パーソナリティ(自己中心性、攻撃性、易怒性、統制不足)、反社会的態度(法律・ルールの軽視)などは明らかである。

より捜査が進むと、交友関係の問題、家庭内の問題、仕事上の問題、余暇の過ごし方などが明らかになってくるかもしれない。もしかすると、薬物やアルコール問題もあるかもしれない。

セントラル・エイトを満たせば満たすほど、本人の犯罪に関連する問題性が大きいということになり、再犯リスクも高くなる。