名勝負ではなかった。けれど…

「この戦いを見終わったら、もう20世紀も、終わっていい」
1997年10月11日、東京ドームで開催された伝説の格闘技イベント『PRIDE1』のキャッチコピーである。
このフレーズは、決して大袈裟なものではなかった。
ヒクソン・グレイシーvs.髙田延彦。
試合内容を鑑みれば、決して名勝負と呼べるものではない。両者の間には明確な実力差があり、ヒクソンの圧勝に終わっている。それでも、歴史的な一戦であったことは間違いないだろう。あれから20年が経つ――。
いまMMA(ミクスド・マーシャルアーツ=総合格闘技)はルールが整備され、競技として確立された。そして世界各地で数多くの大会が開かれている。UFCをはじめ、RIZIN、Bellator、修斗、パンクラス、DEEP等々。選手個々の技術も向上、かなりのハイレベルな闘いが随所に繰り広げられている。
そして、リアルファイトとしての総合格闘技、肉体エンターテインメントであるプロレスの棲み分けもハッキリとした。
だが20年前はそうではなかった。
プロレスをリアルファイト視する者も少なくなかったのである。よって、ヒクソンvs.髙田は「グレイシー柔術vs.プロレス」の闘いだったのだ。そして、この試合の結果を受けてプロレス時代から総合格闘技時代へと移行していく。ご存知の通り、『PRIDE隆盛期』が築かれていった。
そう、1997年10月11日は、リアルファイト幻想を纏っていた「プロレスが死んだ日。」だったのである。