「20代で借金作って夜逃げ…一寸先は闇だった」ダイソー社長が告白

100均の帝王「小心者」の兵法
週刊現代 プロフィール

わからないから面白い

――以来、防衛に対する気持ちが強くなったそうですが、一方で野外販売から、「店舗内で売る」という新しい販売方法にも挑戦されています。

「最初に声をかけていただいたのはスーパーのユニーさんでした。店舗の4階を催事場にしたから、そこで100均をやってくれと依頼があったのですが、正直、絶対にうまくいくはずがないと思っていました。

100均は、人がたくさん集まる店頭じゃないと誰も買ってくれない。エレベーターもない4階までお客さんが来るはずがない。

ところが、しばらくして店に行くと目を疑うような光景が広がっていました。たくさんのお客さんがウチを目当てに4階まで来てくれたんです。そこで店舗を構えても売れるんだとわかった」

 

――勢いに乗った矢野商店は、'77年に「大創産業」と名を変えて店舗を拡大。「世界のダイソー」と呼ばれるまでになりました。

「年商1億円なんて絶対不可能だと思っていたのに、いまや1時間に1億円の売り上げを稼ぐようになったわけですから、人生はわからんもんです。

海外進出も成功するとは思っていなかったけど、実際にやってみると思いもかけないことが起こりました。シンガポールでは使い捨てカイロが爆発的に売れたんです。現地の人が海外旅行に行く際に、寒いだろうと買っていくのです。

灼熱のサウジアラビアでは、意外にも手袋などの防寒具が売れた。気温が20度以下になると、みんな寒い寒いと言うんです。

モンゴルではアイスクリーム器が飛ぶように売れました。外は零下でもゲル(テント)のなかはストーブをがんがん焚くので暑いんです。このように、ときに計算できないことが商売には起こる。だから面白いし怖いんです」

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――いまモノが売れない時代ですが、今後、小売業界はどうなっていくのでしょうか。

「商品の進化のスピードが勝つか、お客さんが飽きるのが先か。難しい話はようわかりません。ただ私らは、お客さんのために『100円で買えるいいもの』を作り続けていくだけです」

聞き手・大下英治(おおした・えいじ)
44年広島県生まれ。『週刊文春』の記者を経て、作家として活躍。著書に『石破茂の「日本創生」』『永田町知謀戦2 竹下・金丸と二階俊博』などがある。近著『百円の男 ダイソー矢野博丈』(さくら舎)が10月5日発売

「週刊現代」2017年10月14日・21日合併号より