開催まであと3年に迫る2020年東京五輪は、数えて32回目のオリンピック(夏季)となる。
記念すべき第1回は1896年に開かれたアテネ大会だが、これは「近代オリンピック」の始まりのこと。その前身となった古代ギリシアの「オリンピア祭典競技」、いわゆる「古代オリンピック」こそがオリンピックの起源と言われる。
古代オリンピックが誕生したのは、紀元前8世紀ごろ。現代のオリンピックは世界平和を願うスポーツの祭典だが、古代オリンピックは全能の神・ゼウスが創設したとも言われ、神々を崇めるための競技祭であり、宗教色が濃い行事だった。
来る東京五輪では33競技339種目ものスポーツが実施されるが、第1回古代オリンピック(紀元前776年)で行われたのはたったの1種目だけ。「スタディオン走」と呼ばれる短距離走が唯一の競技だったのだ。
スタディオン走は、1スタディオン(約192m)を全力疾走する競技だ。選手たちはスタートラインに敷かれた石製のブロックの中央に刻まれた2つの溝に両足の指をかけ、立ったまま、前傾姿勢でスタートを待つ。
コースはひたすら直線でコーナーはない。それだけにスタートの意味は大きく、フライングを犯す選手が後を絶たなかったが、違反者には鞭打ちのペナルティが待っていた。
さらにスタディオン走の優勝者はその名前が大会全体の呼び名として用いられる栄誉が与えられていた。そのため第1回古代オリンピックは、スタディオン走で優勝したコロイボスの名前を冠して、「コロイボス・オリンピック」と呼ばれる。
ちなみにスタディオン走では当初、褌のようなものを着用していたが、のちに全裸で行うようになり、出場できるのも男子選手に限られていた。
紀元前728年の第13回大会までは、スタディオン走のみ。そのため大会も1日で終了していたが、第14回大会で、1スタディオンの直線を往復するディアウロス走が加わったのを皮切りに、種目数が増えていくことになる。(井)
『週刊現代』2017年10月28日号より