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「悪夢のような成年後見制度」役所を訴えた、ある娘の告白

成年後見制度の深い闇 第9回
長谷川 学 プロフィール

判決:「その手続きは違法であった」

抗告を受けた名古屋高裁はどう判断したか。

桑名市は母親が過去に医療機関で「後見相当」の診断を受けたことがある点を挙げ、津家裁は正式な精神鑑定を行わないまま、診断書をもって後見開始を容認していた。

だが名古屋高裁は2017年1月10日、この津家裁の審判を退ける判決を下した。重要な判決なので、以下、判決文を引用する。

<後見開始の審判をすることができるのは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者についてである>
<そして、後見開始の審判をするには、手続上、明らかにその必要がないと認めるとき以外は、成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定しなければならないところ、原審は、本人の精神状況につき鑑定を経ずして後見開始の審判をした>

名古屋高裁は、津家裁が審理の過程で調査した母親のかかり付け医師らの診断書の内容を再検証し、その結果、<診断書では、自分の意思を伝えられるとされている>ことを指摘。

また診断書に記載されていた、認知症判断の基準となる「長谷川式スケールテスト」の数値について、<高度の認知症を示すものとまではいえない>と家裁と異なる判断を下した。

 

さらに決め手となったのが、2016年11月に長女と父親が母親と面会した際の、母親との会話を文章に起こしたもの。これを証拠として提出したところ、名古屋高裁は、

<(母親は)提示された写真に写された親族を認識し、約30分にわたって抗告人(注・長女のこと)との対話が一応成立していることがうかがわれ、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあることについて、明らかに鑑定をする必要がないとは認められない>

と判断したのだ。そして、

<本人の精神状況につき鑑定を経ずして後見開始の審判をした原審は、その手続きに違法があるというべきであるから、取り消しを免れない>

として、審判を津家裁に差し戻した。前出の宮内氏は、こう評価する。

「今回の高裁の判断自体は、教科書通りではあります。被後見人である母親が、『事理を弁識する常態にない』というのは、『いつも何もできない状態とはいえない』という意味で、まさに現実に則した判断なのです。

一方で、こうしたロジックによって家裁の審判が覆されることは異例と言えます。この判決は、今後の成年後見制度の運用にはもちろん、すでに全国で行われた数十万件にものぼる家裁の類型審判の見直しにも、大きな影響を与えるでしょう