「安倍政権の野望」は是か否か、選挙の争点はそこだろう

国難、国難というけれど
辻野 晃一郎 プロフィール

戦争で儲ける国にしないために

筆者は、以前、週刊文春に連載を持っていたときに、「戦争で儲ける国にしないために」というタイトルでこの流れに警鐘を鳴らすメッセージを寄稿したことがある。

その中で、評論家の佐高信氏が、テレビ番組で「戦争は一番確実に儲かって楽な商売で取りっぱぐれがない」と発言していたことを引用させてもらった。

佐高氏も、やはりこの流れに強い警戒感を示し、「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ戦後の経済人、中山素平氏が「平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と言い切った話を紹介していた。

これが縁となって、その後佐高氏と知り合ったのだが、同氏から、昔、ソニー創業者の井深大氏をインタビューしたとき、井深氏が「経団連は、軍備をやらなければ日本の工業はついていけないと言うが、私は逆で、アメリカのエレクトロニクスは軍備によってスポイルされると言い続けてきた」と発言していたと教えてもらった。

ソニーは私が最初に勤めた会社で、私は井深氏のその発言については知らなかったが、この話を聞いて心から誇らしく思った。「軍備が技術発展をもたらす」というのが世間一般の見解であろうが、井深氏はそれを真っ向から否定していたのだ。

戦後復興をリードした経済人には、中山素平氏や井深大氏のような気骨のある平和主義者としての経済人がいくらでもいたが、今はどうだろう。

儲かれば軍備でも原発でも大歓迎、ただし自分自身に災いが降りかからなければ、というような節操のないスタンスの身勝手な経済人ばかりが増殖しているように感じる。東芝の凋落などはその帰結ともいえるものではないのか。

戦後、平和憲法の下、戦争放棄した我が国は、「軍産複合体」化した戦前の国家体質を反省し、少なくとも表向きには軍事と経済活動を相容れないものとして切り分けてきた。いわゆる「死の商人」ビジネスとは一線を画してきたのだ。

この立場は我が国の立場としてこれからも堅持していかねばならない最も重要なものの一つだ。しかし、一連の安保関連法成立の裏で、ついにその歯止めも取り払われてしまったことには、ここであらためて警鐘を鳴らしておきたい。

 

行政の信頼は取り戻せるのか

一強多弱が続いたがゆえの傲慢な政治は、この国のあるべき姿を強引に捻じ曲げて来たが、ついに森友・加計学園問題や稲田元防衛大臣の日報隠蔽問題などを引き起こした。

発覚した一連の不祥事を覆い隠すためだけに、閣僚や高級官僚たちが、あるものを無いと偽り、発言したことを記憶にないとしらを切り、公文書を破棄したと口裏を合わせた。挙句の果てには、国会で不誠実な対応を貫き通した財務省の官僚が国税庁長官に昇進した。

これらを、国を挙げての「モラルハザード」と言わず何と言うのか。

一時の内閣支持率急落の真因は、行政の信頼を著しく失墜させた安倍総理自身に多くの国民が不信感を抱いたことにある。

内閣改造で閣僚たちを取り換えようが、優勢が伝えられる解散総選挙で再び圧倒的多数を得ようが、安倍総理が自ら招いた政治の劣化という問題は決して一件落着とはならない。