ガン発見に耐性菌退治…最新医療の要「ふしぎなATP」の底力

生命の本質につながる物質
ブルーバックス編集部 プロフィール

それは生命の根幹をなす物質

実はこれまで、このメカニズムの共通性のせいで、ATP合成に至るメカニズムを利用した感染症の治療薬を発見することは難しいと考えられてきました。つまり、細菌や微生物のATP合成を阻害する化合物を見つけても、それは同時に、ヒトのATP合成も阻害してしまう可能性が高いからです。そうなれば、治療薬どころか、毒にしかならないおそれもあります。

しかし、研究者たちはあきらめたわけではありませんでした。細菌や微生物のATP合成の過程だけを、特異的に阻害し、人間に害のない化合物を探す努力を、多くの研究者が続けてきたのです。

そして、膨大な化合物を調べた結果、成功例も出てきました。そのひとつが、多剤耐性結核菌のATP合成だけを阻害する、画期的な治療薬として注目されている商品名「ベダキリン」(ベダキリン・フマル酸塩)です。

生命の根幹にかかわる物質だからこそ、私たちが生命に対する理解を深めるキーワードになるだけでなく、最先端の創薬にまでかかわってくる。ATPを知ることは、無限に広がる、生命の知識の世界の扉を叩くことに他なりません。

ATPが生命を維持する、緻密なシステムをしっかり理解できる『生命を支えるATPエネルギー』を通して、生命とエネルギーを巡る壮大なドラマに迫ってみませんか?