父を「ひき逃げ」で殺された遺族が衝撃の動画を公開

「ゴミだと思った」で許されるのか
柳原 三佳 プロフィール

そのときの実験映像がこれだ。

車がダミー人形に乗り上げた瞬間に、大きな音と振動が車内に伝わる様子が記録されている。

<「ゴミだと思った」と供述し無罪を主張する加害者に対し、被害に遭った父親と同じ体型のダミー人形を使って、遺族自ら轢過実験を行ない、衝撃の大きさを確認した際の映像>

鈴木さんは語る。

「父と同じ体格のダミー人形を使って、何度も轢過(れきか)実験をしたのですが、轢いた瞬間には非常に大きな音と衝撃を感じました。加害者はゴミか石ころのようなことを供述し、検察もこれを認めていましたが、車が破損するほどの衝撃を感じながら、停止も確認もしないというのは考えられません」

この実験結果を持って、遺族は最高検察庁に再捜査を訴えた。これが功を奏したのか、ようやく検察は本格的に再捜査に乗り出した。

そして、事故から4年目に入った2016年3月28日、検察は一転、「ひき逃げの故意が認定できる」と判断。不起訴となっていた加害者は、「救護義務違反」(=ひき逃げ)と「報告義務違反」の両罪で在宅起訴された。

裁判は名古屋地裁で係争中だが、加害者は現在も『無罪』を主張している。

 

鈴木さんは語る。

「『ゴミをひいたと思った、だからひき逃げではない……』十分な捜査もせずに加害者のそんな言い訳を鵜呑みにしてはならないということを、現在進行中の刑事裁判の中ではっきりさせてもらいたいと思います」

同様のひき逃げ事件が多発

2016年3月には、名古屋市内で車をバイクに追突させ、被害者に大けがを負わせながらも逃げ去った弁護士が、逮捕後、「バイクだと思わなかった」「酒は事故後に飲んだ」と供述している、という報道が流れた。

この弁護士は結果的に、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の罪で起訴され、昨年12月、名古屋地裁で懲役3年執行猶予4年を言い渡されたが、法律の専門家までもがこの手の言い訳をしていることに多くの批判が集まった。

実際に同様の供述で「ひき逃げ」の罪から逃がれようとする加害者は少なくない。
もうひとつのケースを上げよう。今年9月15日、千葉地裁で下された道交法違反(ひき逃げ)の判決は、被告人無罪というものだった。

この事故は2014年1月15日午前1時10分、千葉県長生村の村道で発生した。

ひき逃げされた消防局職員の男性(当時29)は、肺損傷などで死亡。その後、長生村職員の男性(40)がこの事故を起こしたとして逮捕された。

加害者は事故後、車を停止させて救護措置などを取らず、警察にも報告しなかったとして道交法違反で起訴されたが、弁護側は「被害者はアスファルトと同化する黒色の着衣で、職員(被告人)はマンホールのふたの影にしか見えなかった」つまり、加害者本人には人をひいた認識はないという理由で、無罪を主張していたのだ。