59人殺害「ラスベガス乱射事件」それでも米国から銃が消えない理由

「最強の利益集団」その影響力
西山 隆行 プロフィール

銃規制強化派の「落選運動」まで…

報道等で、NRAはしばしば、一切の銃規制を認めない強硬派だと紹介されることがある。

だが、昨年発表した論考でも説明したように、実際にはNRAは既存法規を順守することを方針として掲げており、銃規制に一切妥協しない米国銃所有者協会やリバタリアンから批判されることもある。

自動小銃が禁止されていることから、NRAは半自動小銃を自動小銃に改造することは既存法規でも禁止されているとの解釈にそもそも立っていた可能性もある。

銃を所持する大半の人々にとっては、現在所有している銃を取り上げられたりすることは絶対認められないものの、バンプ・ストックに関する問題の優先順位は必ずしも高くない。NRAはこの点で妥協をしたかのような姿勢を見せることで銃規制をめぐる議論を鎮静化させようとしている可能性もある。

全米最強の利益集団の一つとも称されるNRAは、その方針に反して銃規制強化を試みる政治家を落選させるための運動を活発に行うことで有名である。

NRAがバンプ・ストックについての規制強化を新たな法制化で行う必要はないと述べていることを考えれば、最終的に議会共和党やトランプ大統領がバンプ・ストック規制を法制化する可能性は低いと考えられよう。

 

「農村の保守派」は説得できない

CNNなどのメディアでは、銃犯罪が多発しているアメリカとは対照的な国として日本を取り上げ、銃規制の強い国は銃犯罪が少ないというメッセージを繰り返し出している。

しかし、既に国内に3億丁もの銃が存在しているアメリカで、「刀狩り」的に銃規制をしようとしても、おそらく不可能だろう。

また、メディアでは、かつて多くの人が銃を持っていたオーストラリアが銃の買い上げなどの措置をとった結果として国内で流通している銃の数を減少させるのに成功したことなどを喧伝している。

このような措置は、リベラル派の多い都市部などでは支持を得ることができるかもしれない。だが、農村地帯に居住する保守派などはこの提案について一顧だにしないだろう。

アメリカの世論調査で、銃購入希望者の背景確認などについての賛否を問うと8割以上の人が賛成するのに対し、抽象的に銃規制をするべきか銃を持つ権利を守るべきかを問うと規制派の率は50%に下がってしまう。

このような世論の状況を考えると、アメリカの銃規制を行うのが非常に困難だということが理解できるだろう。