59人殺害「ラスベガス乱射事件」それでも米国から銃が消えない理由

「最強の利益集団」その影響力
西山 隆行 プロフィール

だが、今回の乱射事件は、これらの銃規制強化案を採用しても防ぐことはできなかった。容疑者は、犯罪歴も精神疾患もなかったため、問題なく銃を購入することができた。

また、サイレンサーは聴覚への悪影響を低下させるほどには銃声を和らげることはできるものの、十分に大きな音が鳴るので、サイレンサーを付ければ銃犯罪が増大すると考えることにはそもそも無理がある(ただし、今回の事件を受けて、共和党指導部はサイレンサーについての審議を行わないと決定した)。

また、銃規制推進派はいくつかのデータを挙げて銃規制強化を提唱している。例えば、銃の数が多い州では銃に起因する死亡者数が多いというデータをあげるなどして、規制の正統性を強調。

しかし、州単位ではなく地区別に着目すると、一人当たりの銃所持率の高い地域(農村地帯)は所持率の低い地域(都市部)と比べて銃犯罪の発生率は低いなど、それとは反対の論拠として使うことのできるデータも存在する。銃の数と犯罪率の関係は、安易な一般化ができないほどに複雑なのである。

銃規制推進派の政治家や活動家は今回も従来通りの強化策を提唱しているが、それでは今回の事件を防ぐことはできないし、その論拠も必ずしも強いとは言えない以上、説得力があるとはいえないのである。

〔PHOTO〕gettyimages

むしろ「規制緩和を」の声も

10月5日、NRAが銃規制強化を容認するようなメッセージを出し、人々を驚かせている。NRAは、半自動小銃を自動小銃のように機能させるバンプ・ストックについて、既存の連邦法に合致しているかを検討するべきだと主張。

これをうけて連邦議会ではバンプ・ストック禁止に関する公聴会を開くことが決定され、トランプ大統領もこの点について検討すると発言している。これらにより、アメリカの銃規制が前進する可能性が出てきたと論じる人もいる。

 

ただし、これらの動きをNRAが変質し始めた証拠だと見なしたり、アメリカが銃規制強化に向けて動き出したと結論付けたりするのには慎重でなければならない。

NRAは、「頭のおかしい人物の行動によって、法を順守するアメリカ人が銃を所有する権利を侵害してはならない」とも主張し、バンプ・ストックに対する規制強化は新たな立法措置として実施するのではなく、アルコール・たばこ・火器爆発物取締局(ATF)による規制の範囲で実施可能だとしている。

また、この声明を出した際にNRAは、人々が所有している銃を他の州に持ち運ぶことについての規制緩和を求める声明も発表している。