2017.10.28
# 本

燃え殻さんが90年代に「信じていたもの、失っていたもの」

7万部超え特別対談
現代ビジネス編集部

次の話は…?

細田 すごく強引な解釈かもしれないけれど、当時はオウム真理教とかの新興宗教も一種のブームだったじゃない? もしかしたらオウムに入信した人たちも、同じような気持ちだったのかもしれないね。

UWFやフリッパーズにハマっていたかどうかは知らないけれど、同じように自分が「これだ!」と信じていたものが、昭和と平成の狭間でなんとなく消えちゃった。特に説明もなく消えちゃった。

普通の人はそこで「まあしょうがないか」とあきらめて、仕事や家庭に時間とお金を注ぐようになるんだけど、「なんでだよ!」という気持ちを持っている人は、別のなにかを求めてさまよってしまうかもしれない。燃え殻の小説に出てくる、90年代に付き合っていた彼女も、突然インドにハマり出すしね。

燃え殻 そういう意味では、僕は幸いにして、その後テレビの美術製作の世界に入って、仕事が忙しくなることで、その消失感を埋められたのかもしれませんね。でも、まさにおっしゃる通りで、心のどこかでは、まだ「仕方ないよな」とあきらめきれない部分があって……。

それは、UWFがどうとかじゃなくて、自分が愛したものとか、信奉しているものが世の中の主流にならなかったことへの虚しさというか…それはずっと抱えているんです。そういう意味で、僕は「大人になれなかった」のかもしれない、と。

細田 なるほど。その気持ちがこのタイトルにつながっていることには納得しました。読んだ感想は……面白かった。めちゃくちゃ面白かった。中島らもの立ち位置を獲得するんだろうなあって思う。僕は大阪に住んでたから、いわゆる「らも世代」でもあるのよ。

 

燃え殻 いやいやそんな、恐れ多い…。いまだに自分が小説を出したことさえ信じられないんですから。…まあもしかしたら、読んでくださった方の中には、自分と同じような90年代を過ごして、同じような消失感を持っている方がいらっしゃるかもしれない。そういう人たちとは、ちょっと話してみたいですね。

細田 正直に言うと……まあ、僕が偉そうに言える資格なんてこれっぽっちもないけど、この小説が「私小説」と知ったときは、少しがっかりしました。燃え殻はめちゃくちゃ面白いことを考えているし、その創造力もあるんだろうなあと思う。だから純粋な小説が読みたかったなあと。

これは暴論と受け取ってもらって全然結構だけど、私小説って死ぬ頃に書けばいいんじゃないの?と思っているところもあって。 彼のことを「現代の室生犀星」だと勝手に思っているので、だから個人的に次は創作を期待しています。

燃え殻 いやあ、正直、次の話なんてまだ…。

細田 でもね、今回の小説でファンになった人もたくさんいると思う。中には、ようやく自分がハマれる作家が現れたって思っている若い読者がいるかもしれないわけでしょう。それなのにいきなり姿を消したら、それこそUWFじゃん(笑)。若者を悲しませてはダメです。だから、続けましょう。書きましょう。

燃え殻 そんな恐れ多い。でも、「読んでもあまり分からなかったけど、心地よかったよ」みたいな感想が届いたら、ちょっと意識しちゃうかもしれないです(笑)。

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