2017.10.28
# 本

燃え殻さんが90年代に「信じていたもの、失っていたもの」

7万部超え特別対談
現代ビジネス編集部

俺たちの時代が来る、と信じていたのに…

細田 UWFってある意味、新興宗教に近かった。前田教だよ。それで分裂した後、神社長が宗教的なものにハマっていくというオチも最高なんだけど(笑)。そういえばビデオとかも発売されていたけど高かった。一本が1万円は平気でしてて、あれが飛ぶように売れたんだってね。ファンは熱心に買っててさ。お布施みたいなものともいえる。僕も2本くらい買ってる。それも、よりによって生で観戦した大会なんだけど(笑)。

燃え殻 僕も買いましたよ!ビデオ。交通量調査のバイトを二日間やって、そのお金を握りしめてビデオを買いに行くんです。だって、UWFを分かっていることが、自分のアイデンティティだったから。

細田 そんなUWFなのに、いきなり解散するわけじゃん。まったくファンに説明がないまま突然解散する。最近になってUWF解散の背景を検証する本が出てきたり、僕もいくつかインタビューをして、その解明に貢献したかなとは思っているけど、当時のファンにとってはポッカ―ンですよ。

ちなみにその頃の僕は大阪にいて、田中正悟先生(前田日明の空手の師匠)のラーメン屋さんでバイトしていたから、ちょいちょい田中先生から話を聞いてたの。だから「俺は凄い情報を仕入れている!」という優越感があったね。そういえば、UWFが3つに分裂したのが1991年で、フリッパーズギターの解散も91年なんだよなあ。

 

燃え殻 そうなんですよ! 今日お話ししたかったのは、そのことだったのかも。UWFもフリッパーズも、ほとんど理由を語ることなく、同じ時期に、突然僕の前から消えるんです。前田と高田の試合を目の前で観て、分からないながらも分かろうとして、ようやく何かをつかんだ気がした。その一年後に、いきなり解散を宣言する。俺が信じていたものはなんだったんだよ、前田、説明してくれよ…って。

その後、週刊プロレスや週刊ゴングを通じて、なぜ解散にいたったか、が少しずつ明かされていくんですけど、それがどうやら、金でもめたんじゃないかと。真偽は分かりませんが、専門誌はそう匂わせていた。そりゃ、ショックですよね。え、俺のお布施足りなかったのかぁって。

細田 なぜか自分を責めるファン気質(笑)。

燃え殻 いや、UWFはまだその理由を探りようがあっただけに、まだマシだったかもしれない。別れた後もまだ連絡を取れる元カノみたいな感じというか、追いかけようがあった。

でも、フリッパーズに関しては、一方的にサヨナラを告げられて、もうそれ以上は追いかけようがないんですよ。置き手紙だけおいて、あとは行方も知れない、みたいな。俺、ようやくフリッパーズのこと理解できるようになったんだよ、それなのに、なぜ突然いなくなっちゃうの…?という感じで。

で、その理由に言及するような記事を雑誌の『宝島』が、小山田圭吾インタビューと称してやってくれた。と思ったらすぐになんか、『宝島』がエロ本みたいになっちゃった。これもショックだった。

細田 ぶははは! 確かに宝島はバンドを中心に扱う音楽雑誌だったのに、バンドブームが終わると、急に方針転換して、ヘアヌードとか風俗情報を載せるようになるんだよね。教祖に裏切られただけじゃなく、教典もいきなり解釈を変えちゃったようなもんだよね。それで今はビジネス本になっている。若狭勝みたいな本だ(笑)。

燃え殻 だから、その時の気持ちたるや、ですよ。例えば1990年にCOMPLEXが無期限活動休止になるんですが、絶頂を極めた二人の判断だから、まあ納得できるというか。新日本プロレスだって、猪木は国会議員になっちゃうけど、これもまあ、猪木は絶頂を極めたし、もう歳だったから次を目指すんだろうなって、納得するしかない。

でも、UWFもフリッパーズも、まだまだ道半ばだったんですよ。この二つが時代の頂点を極めれば、ようやく俺の時代が来る!って、そう信じていた。それなのに…。

とにかく、90年代初頭は「消失感」の時代だった。僕だけじゃなくて、同じ世代で同じものが好きだった人たちは、この気持ちが少しは分かるはずなんです。

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