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よい睡眠は「食事で作れる」⁉
ブルーバックス編集部 プロフィール

食生活でマウスの睡眠障害が改善

マウスを睡眠障害にする方法を開発したことで、睡眠障害を改善するための研究も進んでいます。一例として、サッポロビールとの共同研究について紹介してもらいました。

「サッポロビールがもっているSBL88(Lactobacillus brevis SBC8803)という乳酸菌を用いています。

この菌については、すでに整腸効果以外にも、アレルギー性体質を改善する効果や、飲酒に対する肝機能の保護効果が報告されていて、睡眠にも効くかもしれないといわれていました。

これをまず健康なマウスに食べさせて睡眠中の脳波のリズムを測ってみると、活動している時間帯をより元気にするような作用があるのではないかということがわかってきました。

さらに、睡眠障害にしたマウスにも食べさせてみたところ、睡眠の乱れを原因とする活動量の低下が抑えられるというような効果が見えてきました」

実験の結果を詳しく見てみましょう(下図1)。

[図1]「SBL88乳酸菌」による睡眠障害改善効果図1「SBL88乳酸菌」による睡眠障害改善効果

横軸は時間で、左半分が昼間(マウスは夜行性なので、この間が睡眠時間帯となります)、右半分が夜間(マウスの活動時間帯)です。

縦軸は、1時間あたりの輪回しの回転数、つまり活動量を表しています。健康なマウス(青の線)では、昼に活動性が低く、夜に活動性が高くなっています。

一方で、睡眠障害にしたマウス(水色の線)では、夜間の活動性が低下し、逆に昼間の本来なら寝ている時間(8時から12時)に活発に活動していることがわかります。

このマウスに乳酸菌SBL88を与えるとどうなるでしょうか。睡眠障害にしたマウスに乳酸菌SBL88を摂取させたところ(赤の線)、夜間(夜行性のマウスにとっての活動期)の活動量の低下が抑えられたのです。

SBL88については、人での試験も行われており、同じように改善効果が見られたという論文も発表されています。ただし、どのようなメカニズムで乳酸菌が効いているのはまだよくわかっておらず、これからの研究課題になっています。

大石さんは、どう考えているのでしょうか?

「乳酸菌のもっている物質が腸内の免疫系に作用しているんじゃないかとか、乳酸菌の細胞壁に含まれる成分が作用しているのではないかとか、自律神経系を介して脳に作用しているのではないかとか、そういったことを考えています」

また、最近では、乳酸菌の他にもオキアミ油(クリルオイル)などで、乳酸菌とは全く異なる睡眠障害の改善効果が見つかってきています。

オキアミ油には、EPAやDHAなどのさまざまな機能性成分が含まれており、サプリメントとしてすでに利用されていますが、睡眠への作用が明らかになってきたのはとても興味深いことです。