それでも小沢一郎は「小池の出馬と首相就任」を諦めてはいない

【ドキュメント】小池政局の深層
中野 弘毅

「ポスト安倍」の流れをどう見るか

安倍は夏の内閣改造直前の7月5日夜、EU(欧州連合)との首脳会談のため訪問していたベルギー・ブリュッセルのホテルで、当時外相だった岸田を自室に呼び、2人だけで酒を酌み交わした。懸案だった日・EUの経済連携協定の協議が妥結する見通しとなり、互いに気分が高揚している中での懇談だった。

そこで安倍は、4年半もの長きにわたって、自分の下で外相を忠実に務めてきた岸田に、こう問いかけた。

「私としては、岸田さんに外相を続けて欲しいと思っている。ただ、岸田さんが党の役職に就きたいと強く希望するなら、考えます」

安倍は内閣改造を前に、まず岸田の意向を確かめておこうと考えたのだ。これに対して岸田は、

「ポストについては少し考えさせてほしい。ただ、私はどのような立場になっても総理が続けるという限り、全力でお支えするつもりです」

と明言。そして、「来年の自民党総裁選に安倍が立候補するのであれば、自分は手をあげずに安倍支持に回る」と約束した。安倍はその言葉に意を強くし、「自分が首相を辞める際には、岸田に禅譲したい」という考えを仄めかした。

 

言葉の正確な言い回しまでは、2人きりの密室の会話なので定かではない。ただ、安倍はその後も親しい政界関係者に、「私が辞めた時の総裁選では、清和会(=細田派、事実上の安倍派)として岸田さんを推すことは極めて有力な選択肢だ」「岸田さんをもっと世間に認知させたい」などとたびたび漏らしている。

当然ながら岸田本人には、もっとはっきりした言葉で「ポスト安倍はあなただ」という意向を伝えている可能性が高い。実質的な「安倍・岸田の禅譲密約」が成立しているのである。

だが、安倍が乾坤一擲踏み切った総選挙で、自民党が50議席以上減らす惨敗を喫して内閣総辞職などという展開になれば、その後の安倍が一存で「岸田支持」を決めたとして、清和会内部をまとめるだけでも容易ではなくなる。

ただでさえ岸田にはひ弱なイメージが付きまとい、発信力に乏しいとの指摘が自民党内には広く存在する。まして、「自民党惨敗」という非常時の首相には不適格だ、という声が広がる可能性が強い。