「東京ひとり勝ち」というデータ無視の誤解が、地方創生をダメにする

小池都知事の発想は間違っていない
池田 利道 プロフィール

東京と地方の抱える問題の本質は同じ

「東京一極集中」=「東京ひとり勝ち」と短絡することの誤りをご理解いただけただろうか。

実態を見誤ってしまう最大の理由は、東京と地方を相対する存在としてとらえるからだ。私たちの生活実感に照らしたとき、東京と地方はひとつながりの存在と言えないだろうか。

 

全国知事会は、大学が過度に集中しているから東京一極集中が起こるとして、東京での大学の定員増を抑制すべきと主張し、政府もその意向に沿う考えだという。同じ政策は高度経済成長期にも行われ、のちに見直された経緯がある。見直しを迫られた最大の理由は、実際に大学に通い、大学のそばで生活する学生の視点に立っていなかったからだ。

人口減少に対応するため、地方は大学の誘致に積極的だ。しかし、たとえ誘致に成功して学生が増えたとしても、彼ら彼女らが卒業後までその地方に定着するとは限らない。未婚者がたまり続け、結婚して子どもができたとたんに出ていってしまう東京23区と、問題の本質は変わらない。東京と地方のいずれも、ファミリー層を定住させ、出生率を高め、税収を増やすことには成功していないのである。

ただ、東京23区は近年、それぞれの地域特性を前面に打ち出した取り組みによって、ファミリー層の定着に成果を上げ始めている。端的な例を挙げると、全国の出生率が1.26(2005年)から1.45(2015年)へと0.19ポイント上昇した同じ期間に、港区の出生率は0.79から1.44へと0.65ポイントも上昇している。少子化の一途をたどっていた中野区でも、近年一転して子どもの数が増え始めている。

背景にあるのは、まちの個性、まちのDNAを最大限に尊重しつつ、課題に対応していこうとする柔軟な姿勢にある。30年間に渡って人口が減り続け、地方に先駆けて人口減に向き合ってきた東京23区のしたたかな戦略を、ここに見ることができる。

近著『23区大逆転』に、「時代の動きを先取りする『東京のいま』は『地方の未来』であり、『地方のいま』はやがて人口減少を余儀なくされる『東京の未来』だ」と書いた。時間や規模の差はあれ、同じ問題を抱える東京(あるいは大都市)と地方が、都市経営のノウハウを大胆に交流すべき時代が始まっている。

小池都知事は「希望の党」の設立会見で「日本をリセットする」と宣言したが、筆者は、リセットすべき分野とすべきではない分野を明確化することこそが、未来のカギを握ると考えている。変化は連続の中で生じるのであり、連続を無視した変化は決して定着しない。来るべき総選挙では、こうした生活の機微に光をあてる政治の実現に期待したい。

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