マンション売買で損しないために、知っておきたい「業界のウラ事情」

仲介業者はこんなことを考えている
榊 淳司 プロフィール

売ろうとしている自宅のマンション名と、「売却」というワードをセットで「ググる」と、実に多くのサイトがヒットする。とてもではないが、すべてチェックするのは容易でない。そのほとんどが大手をはじめとした仲介業者と、分譲マンション専門の資産価値情報提供サイトだ。

また、「○社同時一括査定」とか「プロが正確に査定」「最新の価格情報提供」と謳っているサイトもある。そして、そういった資産価値に関する情報提供、あるいは価格査定を行うことについて、課金(有料)であることを表示しているサイトはほとんどない。たいていが無料である。

そこで多くの人は「こういう専門家に査定してもらえば、正確な資産価値がわかる。しかも無料だ」と素直に考える。そして、いずれかのサイトに自宅マンションの情報を打ちこむ。

まあ、それも悪くない。本当に売却する気があるなら、試しにでもやってみるべきだろう。情報提供を中心に行うサイトなら、そこから得られる自宅の査定価格は大いに参考になるはずだ。

仲介業者のサイトの場合は、電話番号などの個人情報を求められる場合が多い。あるいは「正確な査定は実際に物件を確認しないと出せません」的な注釈付きで査定額を提示する仲介業者サイトもある。

 

仲介業者はなぜ無料で価格査定するのか

さて、そういった仲介業者が個別住戸の査定サービスを提供する裏側の仕組みはいったいどうなっているのか。そこには、一般の方々にはあまり知られていない、業界特有の事情や法的な規制、いびつな商習慣が存在している。

順番に説明していこう。まず、最初に3項目の事実を指摘しておく。

世の中にタダでサービスを提供している営利企業はほとんど存在しない
仲介業者は最終的に、顧客よりも自社(もしくは担当者個人)の利益を優先する
不動産仲介業者のビジネスモラルはけっして高くない

基本的な事実として、中古マンションも含めて世の中の不動産の資産価値を査定して「○○万円ですよ」という鑑定を有料で行うのは、法律上、不動産鑑定士だけに許された行為である。

したがって、仲介業者が「この住戸は○○万円です」という査定を有料で行うのは、違法行為に当たる。場合によっては業務停止などの厳しい処分を受けることもある。だから、不動産鑑定士でないかぎり、「査定」は無料でしか行えない。

では、仲介業者はなぜそういう専門的な知見の提供を無料で行っているのか?

それは、彼らが「専任」をほしいから、ということに尽きる。専任は「専任媒介契約」の略称だ。この契約を結んだ場合、契約を結んだ業者を通してしか住戸を売却できなくなる。仲介業者からすると、専任の契約を取れれば、少なくとも売り手(住戸の持ち主)から手数料が稼げるわけだ。

実は、この専任媒介のほかに、「一般媒介」と「専属専任媒介」という二つの媒介契約がある。一般媒介は、どの業者に依頼してもいいもの。A社だけでなく、B社やC社にも「私の住戸を売ってくださいね」と依頼できる。

売買が成立したら、売り手は、買い手を見つけてきた仲介業者にのみ手数料を支払うことになる。だから、一般媒介で売却を依頼された業者は、買い手を見つけないかぎり手数料をもらえない。買い手を見つけたとしても、そのときにはすでに他社が見つけた買い手と話が進んでいる可能性もある。そうなれば、100%無駄骨だ。

そんなわけで、ご想像の通り、多くの業者は一般媒介で売却を依頼された物件は熱心に売ろうとしない。