母のネグレクトと兄からの性的虐待…「愛着障害」になった女の一生

育てられない母親たち⑦
石井 光太 プロフィール

この頃から、一時期おさまっていた摂食障害が再発する。50キロ台だった体重は30キロ台にまで落ち、強制的に入院させられたこともあった。なんで自分がこんな目に。そう考えると、さらに娘への恨みつらみが重なっていく。

やがて美千は勇に見せつけるように娘に対する虐待をはじめた。わざと腕をつねってアザをつくり、勇にこう言うのだ。

「あんまり泣くものだから耐えられずにぶっちゃった」

そういえば、勇は自分を心配してくれていると思った。だが、勇はまったく別の反応を示す。娘に手を上げたことを厳しく叱りつけ、心療内科へ通わせたのである。

 

止まらない虐待

その後も、美千は娘に暴力をふるいつづけた。幼い子供が親の関心を自分に向ける度に、わざと悪いことをする「試し行動」のようなものなのだろう。だが、勇は怒るか、あきれるかしかしない。

やがて娘への暴力はエスカレートしていく。顔がパンパンに腫れるまで叩いたり、風呂場に何時間も閉じ込めたりするのだ。勇はさすがに問題だと思って保育園に通わせて送り迎えも自分がやり、美千が娘に手を上げさせないようにした。

美千にしてみれば、勇から遠ざけられたという思いだっただろう。それが娘に対する恨みをますます膨らませた。

事件が起きたのは、娘が小学校へあがる直前だった。勇は娘を土曜日にやっている英会話教室に通わせることにした。勇は美千に言った。

「送り迎えは全部俺がやるから。おまえは息抜きにどこかへ行ってていいよ」

美千は家族から自分が捨てられたような気持ちになった。

英会話教室に通いはじめて1ヵ月目の晩のことだった。夜、ゆっくりを風呂に入って出てきたところ、美千が号泣して廊下に座り込んでいた。床には血だらけの果物ナイフが転がっている。

「どうしたんだ」

次の瞬間、信じられない光景が目に飛び込んできた。娘が背中を切られて倒れていたのである。

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「おまえがやったのか!」

「だって、この子が泣いたから!」

「泣いたってこんなことするやつがいるか!」

勇はすぐに娘を車に乗せて病院へ運んだ。

娘は一命を取り留めた。だが、病院が警察へ通報。美千は娘に対する傷害の容疑で逮捕されることになった。