こんなに少子化対策している日本で、子どもが増えない厄介な矛盾

そろそろ政策の検証が必要だ
赤川 学 プロフィール

第二に、子育て支援や介護の受け皿づくりを、経済成長を促す財政政策として明確に位置づけていることである。

特に「全世代型」の社会保障制度のために、「2兆円規模の新たな政策を実施する」という公約は大いに首肯できる。むしろ子育て支援については、すべての子どもたちに平等な支援という条件のもとで、将来的には10兆円規模で増額すべきであろう。

ただし、このための財源を2%の消費増税に頼るというのはいただけない。本誌コラムニスト高橋洋一氏(何度でも言う「国の借金1000兆円」のウソ。財務省も劣化したものだ)や経済評論家の上念司氏(「石破茂の経済政策は支離滅裂」『月刊Hanada』2017年11月号)がたびたび指摘するように、バランスシートや統合政府という観点からみれば、現在の日本の財政再建は達成されたも同然であり、増税が必要な環境とは思われない。

むしろデフレを脱却しきれていない現状では、消費増税が物価上昇率2%の目標を頓挫させ、経済成長を腰折れさせかねない懸念が強い。消費増税凍結を唱える野党が登場するのであれば、その「尻馬に乗る」のも悪くないのではなかろうか。

高橋氏が強調するように、数兆円規模の子育て支援や介護支援を増税なしに、子育てへの投資である教育国債の発行という形で財政的に賄うならば、名目経済成長率を一定レベルに維持することができ、公的年金の持続可能性が高まり、1人あたりのGDPも増加する。

不安定な東アジア情勢にあって不可欠な、国防力の増強につなげることもできるであろう。

 

GDPと出生率は無関係?

ただし第三に、子育て支援や介護支援が充実し、経済の安定的な成長が可能になったからといって、それで出生率が高まるとは想定しないほうがよい。

しばしば、子育て支援によって経済が成長すれば(景気が回復すれば)、子どもを産みやすくなって出生率が高まる、さらには、2025年までに希望出生率1.8を達成できるという議論さえみかける。

たしかに子育て支援、特に経済的な支援はGDPを直接的に高めるであろうけれども、そのことが出生率を高めるとは、容易には言い切れない(いずれ改めてこの問題を論じる)。

なるほどここ10年、たとえば2005年以降に限れば、1人あたりGDP(購買力平価)も出生率も単調増加しており、正の相関があるようにみえる。

しかしそれ以前、たとえば1980年から2005年にかけて同じ指標を用いると、1人あたりGDPは単調増加しているのに出生率は単調減少しており、強い負の相関がある。

1980年から2015年にかけて、35年全体の時系列相関を取り直すと、やはり強い負の相関があり、この期間全体としては、「1人あたりGDPが増えれば増えるほど、出生率は低くなる」とさえいえそうなのである(下図参照。拙著『これが答えだ!少子化問題』ちくま新書、2017 100-102頁)。

どの期間をとるかによって、相関の向きがコロコロ変わるような関係に対しては、慎重に検討すべきである。さしあたり、1人あたりGDPによって示されるような豊かさと出生率の間には、因果関係はないと想定したほうがよさそうだ。