「小説が消滅するかも」17万部作家が、いま抱いている危惧

『騙し絵の牙』で描きたかったこと
現代ビジネス編集部 プロフィール

小説そのものの消滅を危惧している

――そもそも『騙し絵の牙』の舞台は出版界で、本が売れないといわれる時代に、大泉洋さん扮する速水という雑誌編集長が奔走して起死回生の一手を探る、という作品です。「出版業界の売り上げは、ここ20年で一兆円近く減っている」といった、出版関係者が眼を背けたくなるような現実もふんだんに書かれている。塩田さんの、業界に対する強い危機感が伝わってきました。

塩田 出版業界、特に小説の世界への警鐘を鳴らしたいと常々思っていました。生意気だとわかっていながら、誰かが声をあげないと変わらないという危機感を持っていますから。

繰り返しになりますが、小説を書けば何も言わなくてもお客さんが買ってくれる…そんな「雛型」は、もう通用しないことは明らかです。でも、その旧式の雛型を疑って、新しい型を創ろうとする人はまだ少ない。

たとえば、いままでの慣習だと、ある出版社から単行本を出せば、大体2年ぐらいで「文庫版を出しましょう」と提案が来ます。でも、文庫本の市場はこの3年、毎年6%の勢いで落ちているんですよ。

「文庫版にするのはありがたいけど、なんでこのタイミングなの?文庫の市場が落ち込んでいるなかで、どうやって売っていくの?」と編集者に尋ねても、「いや、単行本の発売から二年が経ちましたので…」と、通り一遍の答えしか返ってこなかったりする。何の手も打たずに同じことを繰り返していたら、さらに市場が縮小するだけなのに。だから、「一回その雛形を見直そうよ」と訴えているんです。

『騙し絵の牙』の作中には、新しい電子書籍の形の提案や、パチンコメーカーと組んで新たなエンタメ小説を作る、といった「従来にない雛形」を登場させています。また、最後には速水があっと驚く決断をして、出版業界の根幹を揺さぶります。

挑発めいたところはあるけれど、これぐらい大胆な提案が必要なほど、危機は進行していると思っています。他のエンタメ業界をみても、生き残りのための努力を惜しんではいません。出版界も変わる努力をしなければ生き残れません。

僕が一番危惧しているのは、「小説そのものの消滅」です。冗談で言っているのではありません。少なくとも電車の社内という空間では、小説というメディアはほぼ壊滅状態。スマホにその地位を奪われている。いい話よりも、「いいね」をつける話に夢中になっている人の方が多いわけですから。この危機的状況をなんとかしなければならないと思っています。

僕は心の底から、小説というものほど優れたメディアはないと思っています。…少し長くなりますが、聞いてもらってもいいですか?

――もちろんです。