セリフで振り返る「ひよっこ」名シーン【トミと早苗の恋編】

あの感動をもう一度②
堀井 憲一郎 プロフィール

「ずっと待ってました」

そして、その彼が、約束の限度を5年越えていたが、赤坂のあかね荘へやってきた。〔152話。9/26〕

それは、みね子と、トミさん、愛子さん、世津子さんと早苗さんが5人でアパート前の小さな広場でお茶会をやっていたときだった。

「早苗ちゃん」
「龍二さん」
「ごめん、時間かかっちまったけど、迎えに来た」

このとき、当の早苗ちゃんはそれ以上反応せず(反応できず)、一緒にいた、みね子、トミ、世津子、愛子の順に反応した。

「えっ、もしかして」、「例の」、「エレベーターの!」、「おいらはドラマー?」

愛子さんの、おいらはドラマー、が可笑しい。おいら、要りません。

「一緒に、花のサンフランシスコ、行かないか、おもしろいぞ。あれっ。怒ってる? ひょっとしたらもうほかに、誰か」

早苗に変わって、みね子たちが答える。

みね子「あっ、いないですいないです」、愛子「いないいないいない」、世津子「ずっと待ってました」。トミさんは声も出ず、じっと早苗を強く見つめる。

この4人の反応が、いい。声の出ない早苗ちゃんにかわり、4人が必死で説明している。

「あっ、いないですいないです」「いないいないいない」「ずっと待ってました」

うん。とてもいい。仲間だ。彼女たちのほうが、慌てていて、あせっている。仲間だ。

これで早苗は彼に説明する必要がなくなり、おそい、とだけ呟き、彼の胸に飛び込んでいった。そしてすぐにサンフランシスコへ旅立った。かっこよかった。

でも見てるほうは、ああ、このドラマ終わるんだと、ここで強く感じた(最終週の火曜日)。

さびしかった。

(第3回【戦争の爪痕編】はこちら

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