セリフで振り返る「ひよっこ」名シーン【トミと早苗の恋編】

あの感動をもう一度②
堀井 憲一郎 プロフィール

「みね子さんの設定は、21世紀から来たタヌキ型ロボットっちゅうのはどうやってことになっとりまして」「はっ!? なんでタヌキ」

22世紀から来たネコ型ロボット「ドラえもん」の連載が始まるのは1969年からなので、タヌキ型ロボット「は!? なんでタヌキ」の登場はそれから2年先んじたことになる。なかなか楽しかった。

それ以前、漫画家2人が、3日間、姿を消したことがあった。みんなが集まって、夜逃げしたんだろうかと心配していた。〔122話。8/22〕

そこへ2人は、楽しげに歌いながら帰ってくる。

「どこ行ってたの3日間も、みんな心配していたのよ」と愛子さんが優しく聞き、いつも漫画家に厳しい早苗さんが「それがなんだいまのは、なにがウォンチューシーユーアゲインだ。ばかものが」と厳しく問いただす。

「あ。すんません。はい。工事現場のアルバイトをしておりました。泊まりで3日で1人6000円で、な」と2人はにこにこ答えた。

ひと呼吸おいて、大家のトミさんは、世界を震わせる大声で叱った。

だったら、そう言って、行きなさいっ!! 心配するでしょうが!

心配されたことが嬉しく、2人は抱き合って泣く。当然また早苗さんに「泣くな」と怒られる。

 

トミさんの過去

大家さんのトミさんは、強烈だ。

もと赤坂の売れっ子芸者、いまは迫力満点、容貌不可思議の大家さんである。

いちど、もと女子寮仲間の幸子、澄子、豊子がアパートに遊びにきたとき、澄子と豊子が、トミさんの容姿と挙動に驚いて、ひたすら瞠目して黙って見つめて続けているので、トミさんはゆっくりと髪をかきあげるようにして「にんげん、よ」と言ったのがすごかった。澄子は死ぬほど驚いていた。

彼女はお妾さんだった。今の言葉でいえば愛人ね、と言ってたが、それは1967年ではなくて、2017年の視聴者に向けて2017年の言葉で言ってくれてたことになる。時代を超えてやさしい。

そして、旦那の死を察知する。これもすごかった。ほぼ人間ではない。

131話〔9/1〕愛子さんとの会話。

「夕べあたりから、胸騒ぎ、って言うのかしら、してね……フッ……ハッ……死んだ。死んだわいま」「だ、だれが」「わたしの愛してる人。人生で一番」「感じるの?」「…愛してるの」

そこへ隣のすずふり亭から鈴子さんが駆け込んで来る。

「い、いまテレビの臨時ニュースで、松永さん、死んじゃったって」「そーう」「ひょっとして、トミちゃん…」「いま、そうじゃないかなって……そうか。死んだか」