感涙!「ひよっこ」の忘れられない名セリフ【ミツオと豊子の絶叫編】

あの感動をもう一度①
堀井 憲一郎 プロフィール

「馬鹿でいいじゃん」

工場最後の操業日。〔53話。6/2〕

すべての作業が終わって、工場の機械がすぐさま業者によって搬出されようとしたとき、豊子は作業場に入って中から鍵をかけ、立て籠ってしまった。搬出を阻止しようとした。

豊子は叫ぶ。

こんだことしたって何もならねえってのはわがってる。わがってるんじゃん」 

じゃあどうして、と幸子さんが聞く。

喋りたいんだよ。いやだって、喋りたいんだよ。誰にかはわがんねえけど、おれはいやだ、みんなと一緒に働ぎでえ、そうやって喋りてえんだよ

いつもの冷静な豊子らしからぬ叫び。

おれは今まで一度だっていやだっていったことはねえ。高校さ行けねえって両親から言われたときも、悔しかったし、悲しかったし、なんで、なんでおればっかりって思ったけんど、でも、いやだって言わなかった。わかったってゆった

でもいやだ。これはいやだ。意味がないがも知れない。バカだって思うかもしれない。時間の無駄だと思うかもしんない。でも、おらは、いやだって言いたい。こっだの、いやだっ!………最初は心は開けねかったけど、トキコさんはさ、もういいでしょって、もう意地張らなくていいでしょって……嬉しかったんだおら………嬉しかったンダ(泣)……(とよこ…)……ここは、おらが本当の自分でいられるところなんだ、いままで、そったな所は、ね。だからこの工場で、乙女寮で、仲間たちで、一緒に笑って、一緒に泣いて……一緒に悩んでくれて、そんだの初めてだったんだ……初めてだったのに……、なして…なして(泣)なしてみんなと一緒にいちゃいげねえの…。なしてここで離れねばいげねえの……なして……(泣)……何言ってんだか。自分でもわがんねえよ。馬鹿だとはおもうちゃ。馬鹿でいいじゃん(大泣)

この豊子の絶叫に、幸子も澄子も優子もトキコもみね子も、見てるものみなが泣いた。

 

しかも、そのあと。

搬出業者が「開けないんだったらドア壊しても運ばせてもらうよ」と作業場に近づこうとすると、それを松下アキラ主任が身を挺して止める。業者の両肩を両手で叩きつつ、こういう。

ちょっと待ってくれと言ってんだ! あなたたちだって、あの子と同じように働く人間だろ。わからないかあの子の気持ちが。中学出たばっかの、女の子。……たった一人で親元離れて、初めての職場なんだ。なくなるのがいやだっていう気持ち、あんただってわかるだろ

そう言われても困るんだ、と搬出業者(岡部たかしが演じていた)は言うのだが、でもどっか優しい。おれたちだってそんなことしたかねえよ、でもこれが仕事なんだよ、という言葉が、胸を突く。

悪いけどもう勘弁してくれ、わかるけど、わかるけど、と業者が作業場に迫ったときに、豊子は自分から出てきた。そして、機械は運び出され、搬出業者も、切なげにトラックで去っていった。男たちはみな、どうしようもない運命を黙って背負っているようだった。

搬出業者を見送るとき、豊子に成り代わって「すいませんでした」と謝ったのはトキコだった。そのきりっとした態度が胸を打った。

忘れられないシーンである。

(第2回「トミと早苗の恋編」はこちら