感涙!「ひよっこ」の忘れられない名セリフ【ミツオと豊子の絶叫編】

あの感動をもう一度①
堀井 憲一郎 プロフィール

トキコの決意

トキコはデビューする。

143話(9月15日放送のはずがミサイル列島横切って朝の放送は翌16日)。茨城の親元へ立ち寄って、両親に謝る。

今日は謝りに来たんだ。あのね、私、芸名を付けることいなるんだ、イズミマコトっつー名前んなる。助川の家に生まれて、お父ちゃんとお母ちゃんにつけてもらったトキコって名前があんのに、ごめんなさい、本当に

しばらく黙って見つめる父、兄、母。いいんでねえか、気にすんな、と兄父が言い、トキコの母はこう言った。

ありがとう。そんなふうに考えてくれて、うれしいよ。がんばっぺ、トキコ。日本一の女優になって、お金持ちになって、東京の豪邸で、お母ちゃんと2人で暮らそ

「えっ」「えっ」と兄と父。

 

「ごめんなさい。堪忍してけ」

茨城の高校を卒業して、みね子とトキコは一緒に東京の墨田区のトランジスタ工場に勤めた。寮住まい。6人一緒に一部屋で暮らした。

先輩に寮長の幸子さん、少し身体の弱い先輩の優子さん。あとは中卒で同時に入った(つまり3つ下)澄子と豊子(私は幸子さんが好きでした)。

豊子は、勉強のできる、また知識の豊富な女の子である(中学の図書室の本を作者名「あ」から読み始め卒業までに「ぬ」まで読んだ)。

ある夜、豊子とトキコが言い合いになる。豊子が、みね子さんが仕事うまくできない理由を賢しげに説明したのに、トキコは怒った。

豊子! やめなよそういうの腹立つ。やめろって言ってんの、そういう言いがだ

冷静ぶって冷たく言い放つのをやめろ、と言う。

イライラしてたんでっしょ、ずっと青森で。自分はみんなとは違うんだ、そう言いたぐてしかたがない。だからいつもトゲのある言い方するしかできない

わかるよっ! 私もそうだったからね。でもわたしはそういうのやめた。もう東京に来たんだから。そんなふうにギスギスすんのやめた。だってそんなことしなくたってもういいじゃない。新しい場所に来たんだから。もういいでしょ。

青森ではそうだったかもしんないけどさ、もういいでしょ、東京来たんだから。そんなふうにいちいち冷たいようなこと言わなくていいんだよ、新しい自分になれんだよ。もう。かわいぐないよ。素直になりなよ

このあと、二人で取っ組み合いになる。ひと騒ぎのあと、豊子はいきなり、きちんと座り直し、トキコに向かう。

「ときこさん!」「なによ、やんのっ」「わがりました。トキコさんの喋ったとおりにします」「えっ」「ごめんなさい。堪忍してけ」

青森訛りで、堪忍してけ、と言って泣き崩れるように頭を下げる豊子。誰が泣かずにおられるものか。

これが29話(5/5)。

そしてこの向島の工場が倒産して閉鎖になる。