「40歳を超えたら転職はほとんどムリ」は、もはや非常識だ

中年がニッポン企業を救う時代が来た!
田邉 裕也 プロフィール

『オッサン、オバハン求む!』老舗企業の決断

取材班がカメラを入れた大阪の医薬品メーカー「森下仁丹」は、まさにそんな「人生100年、二毛作時代」における働き方を問いかけている企業だ。

今年の春、「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」と大胆なフレーズをかかげて年齢・専門性不問の社員募集を行い、「もう一旗あげよう」という気概を持つ中高年層を広く求めた。メッセージに共感したのか、予想を大きく上回る応募が寄せられ、若干名の募集枠に、自動車のエンジニアから学校の校長まで2200人が殺到した。

「年をとればとるほど、新たなことに取り組むチャンスは減っていく。余計なことをするなという雰囲気になる。しかし、組織の中でもうひと頑張りする、という考え方もあるんじゃないか」

駒村純一社長は、採用活動に秘めた思いをそう明かした。

森下仁丹は1980年代、口の中をすっきりさせる口中清涼剤「仁丹」で一世を風靡したが、90年代に入り売り上げが低迷。多額の負債を抱えた。14年前、大手商社に勤めていた駒村さんに「経営を立て直しほしい」と声がかかり、経営再建に着手。さまざまな新製品を送り出してきた。

経営再建の課題となってきたのが、保守的な風土だった。社員自らがアイデアを生み出し、行動を起こす組織に変えていくために、意識改革が必要だと駒村さんは考えた。その起爆剤として白羽の矢を立てたのが、経験とやる気にあふれた中高年たちだった。

 

人事が明かす採用のウラ側

特に興味深いのは、同社の採用基準だ。番組の取材過程では、選考の舞台裏を明かしてもらった。

即戦力を採用する以上、経歴重視かと思いきや、意外な答えが返ってきた。MBA取得などの資格や華々しい経歴は、評価のポイントに入っていなかった。駒村さんたちが見ていたのは、どれだけチャレンジを行ってきたのかという「過去の失敗経験」や、周りの意見を柔軟に取り込んでいけるかといった「人間性」だったのである。

この評価軸は、中高年の活躍を占う上で示唆に富んでいる。実は、森下仁丹は過去に経歴重視の中途採用を行ったものの、当時採用した人材にうまく定着してもらえなかった苦い経験がある。

駒村社長は言う。

「過去の経験とかスキルとか、そういうものはもちろん必要は必要なんだけども、上から目線でやりそうな人っていうのもいるしね。なんだこの会社、こんなもん持っていないのか、とかね。愚痴から入られちゃったら、全部否定論になっちゃうから。ウチの状況を見ながら、一緒に作り上げてくれるような人がほしいんです」

キャリアを積んだ中高年は、過去のやり方を押し通そうとする傾向が強く、任される職域や風土の違いから、転職先で不満を抱きやすいという。俗に言う「大企業病」である。

森下仁丹が求めていたのは、問題をあげるのではなく、自ら動いて周囲を巻き込みながら改善策を打っていく「プレイングマネージャー」のような人材だった。転職エージェントによれば、これは何も森下仁丹に限った話ではなく、変革途中にある大企業、中小企業など、多くの企業に共通するニーズだという。

中高年は自らの経歴や資格などを売り込みがちだが、企業側は適応力や柔軟性を見ている。この認識のズレを理解しておくことは、転職を考える際のヒントになると言えるだろう。