官僚の聖域で10億円を懐に入れた男を追え!外務省機密費事件の真実

国家のタブーに触れた二課刑事の闘い
週刊現代 プロフィール

本当の狙いはキャリア組

若松 松尾の取り調べにはどのような気持ちで臨まれましたか。

萩生田 2月の初めから松尾の任意聴取を開始し、3月10日に逮捕するまで、いかに極秘で捜査を進めるかということに細心の注意を払いました。

清武 聴取の事実がマスコミに漏れたら、松尾は心を開かないし、外務省も彼を切り捨てようとしていたから、最悪の場合、自殺という道を選ぶこともありえた。

 

萩生田 でも、当初は否認が続きました。前年、「1億8000万円を着服した」という上申書を松尾は提出していたのですが、詐欺に関しては「完全否認」で来た。ほんの一部の罪を最初は認めて、上申書を書く人間は多いんです。ただ、いざ逮捕が近づくと、否認に転じるケースがほとんどです。

若松 取り調べを担当した刑事さんは、その上申書を、本人の目の前で破り捨て、取り調べをスタートさせたそうですね。

萩生田 取り調べをやったのは、鈴木敏という私の部下でしたが、「こんなものは一切信用しない。すべてを話してもらう」という彼の意志表示でした。そして、その言葉通り、敏が、松尾を落としてくれた。逮捕から2日後の3月12日のことです。

若松 鈴木さんがどうやって松尾を落としたのか、ドラマ的には、決めゼリフがあるとわかりやすいのですが……。

清武 落ちたキッカケは、鈴木さんが松尾に見せた一枚の写真だったと聞いています。そこには松尾の両親の墓の写真が写っていた。「嘘をついて、ご両親に恥ずかしくないか。お墓の下で泣いているんじゃないか」と鈴木さんが言った瞬間、松尾は泣き崩れ、自供を始めたそうです。

萩生田 人が落ちるときって、意外と「あれっ」と思うようなときに落ちたりするものなんです。